そんなセンシンロボティクスは、間下が1998年に起業したテレビ会議などのビジュアルコミュニケーショサービスを提供する会社・ブイキューブからカーブアウトする形で産声を上げた。
「2015年10月の独立時にブイキューブから連れてきたのは1人だけ。採用もガバナンスも分離しているし、エンジニアやデザイナーと知見を交換することはあるものの、全くの別会社です。このカーブアウトは『比較的小規模な上場企業(ブイキューブ)が新規事業へチャレンジする際の試金石』となります」と間下も語る。
センシンロボティクス代表取締役会長の間下直晃氏
センシンロボティクスはブイキューブの顧客・知見、起業で培った経営スキルを備えた状態から「ゲームスタート」が可能であり、「ドローンで撮影している映像や対地高度、飛行速度、機体の傾きなどを遠隔かつ複数の拠点でリアルタイムに共有し、コミュニケーションを取ることができるシステム」もブイキューブの技術があったからこそ早期に実現できた。
そんな同社は、2018年、グロービス・キャピタル・パートナーズや伊藤忠テクノロジーベンチャーズなどから12億円の資金を調達した。ドローン業界と同様、前途は洋々である。
スプツニ子!が参画
例えば、遠くない未来に次のような出来事があるかもしれない。
「車の運転時、『また赤(信号)か』と漏らした一言に対して、AIから『お疲れのようですね。事故に遭う可能性が高まっています。近くの駐車場で15分の休憩をとってください』と提案される」
「久しぶりに母親に電話をかけたがなんとなく素っ気ない反応。少し落ち込んでいるとAIに『お母様は照れてらっしゃるだけです。じつはものすごく喜んでいたんですよ』と励まされる」
本人たちでさえ気づいていない気持ちの揺れ動きを音声による感情解析で「リアルタイムで見える化」してくれるのがEmpathのソフトウェアだとCSOの山崎は語る。
このソフトウェアの特徴は、あらゆる言語で、話すスピード、トーン、ボリューム、リズムなどからリアルタイムで喜び、平常、怒り、悲しみの4つの感情と元気度を解析・表示することができる点にある。現在、このソフトウェアが最も活用されているのはコールセンターであり、その売り上げは1億円ほどだという。
コールセンターでは通話者とオペレーターの感情をSV(指導者・管理者)が常に把握。通話者の「怒り」の感情が高まり、オペレーターが「平常」を保てていない場合はすぐに対応を変えることができる。これにより、通話者の怒りを早急に和らげると同時に、オペレーターのメンタルを安定させ、離職率を下げることが期待できる。
もちろん、オペレーターも通話者の感情が「見える」ので、より円滑な対応が可能になると同時に、リアルタイムのフィードバックが得られるので成長速度が早くなるという。