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事業の強みについて尋ねると、「AI産業における主流は画像解析や自然言語処理などであって、そもそも音声感情解析はまだマイナーな領域です。Empathは商用の事例が他社に比べて圧倒的に多い(50カ国、1700社から集めた音声データを持つ)ため、単に感情解析の結果を出力するだけでなく、どのような場合にどの感情値がキーになるのかが分かっている点が大きな強みです」という答えが返ってきた。


Empath CSOの山崎はずむ氏

例えば、コールセンターでオペレーターを評価する際には、「安定して『平常』の感情が高い人」ほど優れたオペレーターである、と判断できるという。また、顧客側に「悲しみ」の感情が出ていると購買行動につながりやすいなどのデータも取れている。

実ビジネスの中でデータ解析をしていく過程で、感情値の「うまみ」を見つけ出したことが競合優位性となっているという。競合は依然として研究領域におり、実ビジネスが展開できていないのだ。

このEmpathも2011〜2015年の間に医療・健康サービスを提供するスマートメディカルにおいて研究開発を進めた後にカーブアウトをしている。

「スタートアップからスタートアップをカーブアウトさせるのは珍しいケースです。カーブアウトのメリットは、自分たちで資金を集め、開発を加速できること」(山崎)

同社は18年7月、SXキャピタル、SBIインベストメントの2社が運営する各ファンドから総額3億2000万円の資金を調達した。広報活動や海外のピッチコンテストでの優勝などにより、事業への周囲からの関心が高まったという。それに加え、事業ドメインが必ずしもメンタルヘルスだけではなくなった、というのもカーブアウトを選択した大きな要因だという。

同社は、カーブアウトする際、スマートメディカルのICT事業部がそのままEmpathに移った。現在は、海外の音声解析・表情解析のスペシャリストなどもジョインして開発を加速させている。

さらに、元マサチューセッツ工科大学メディアラボ助教のスプツニ子!も同社に「アーティスト」として参画した。その背景にはあるのは「倫理的問題」だという。

Empathが持っているような先端技術は、その使い方を誤ればディストピア(反理想郷)を招来してしまう可能性も秘めている。だからこそ、自社のテクノロジーに対する「倫理的まなざし」が必要であり、スプツニ子!にはEmpathにとっては耳が痛い話も公の問題にしてもらうのだという。

会社がまだ若い段階でその方向性を明確に示すことで、理念に共感したメンバーの加入も期待でき、その輪が顧客や社会へと広がっていく。

それこそが、会社の理念である「共感(Empath)に満ちた社会」に繋がっていくのだと信じているのだ。

文=松浦朋希 ポートレート写真=隼田大輔

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