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日本の陸上界に、“本当の金メダル“への探求者がいる。「全力で走る」の意味を追い続ける、末續慎吾だ───。
彼は、メダリストでありながら、自身をその呪縛から解くためにあがき続けた。孤独からの脱出、周りの全てから力を得る喜びを感じ、走るために生まれてきた男。
ハンティング・ワールドのフィロソフィ、ブランド(ボブ・リー)の精神と共鳴する言葉。
末續慎吾、彼が語る「走る」意味とは。
(以下 ハンティング・ワールド 特設サイトより転載)


日本陸上界に燦然と輝く記録を残してきた末續慎吾が追い続ける、「走ること」の真意。

満たされない。誰から見ても栄光を手にしたように見えるのに、彼はまだ満たされていない。陸上選手末續慎吾は、オリンピックのシルバーメダリスト、日本記録保持者でありながら、走ることの意義を求め続け、39歳になった今も現役選手であり続けている。

「北京オリンピックのリレーで銅メダルだったのが10年経って繰り上げで銀メダルに変わるという出来事がありました。僕にとっては、2003年に取った銅メダル以上にはならない。メダルの価値とは何かを考えるようになりました」



古代ギリシアで生まれた競技会オリンピック。勝利を得たアスリートは神からメダルを与えられてきた。しかし、その本当の意味はメダルの色ではなく、「メダリストとして生きること」という問いを課すものだったのかもしれない。そう考えると自分はまだ陸上選手として到達しておらず、一生かけて探求し続けていくかもしれないと末續は語る。

「“走る”という意味を探求し続けたいのかもしれません。メダルを獲りたい、記録を出したいということが目的だったら、もう現役を辞めてもいいはずです。でも、辞めて良いと思えなかった。よく、子供達に『全力ってどうやって出すんですか?』と質問されるのですが、“全力で走る”ということに答えを出せていないと考えるのです。僕もメダルを獲った時、確かに全力で走ったはずなんです。でも、まだまだ……という気持ちがずっと残っていて」

2003年に末續が叩きだした200m、“20秒03”という日本記録は、16年経った今も未だ破られていない。多くの人間が情熱を持って挑戦しながらも超えられていない末續の日本記録。23歳で得た勲章をどのような気持ちで抱え、陸上を続けてきたのだろうか。



「20代は記録のみが陸上選手としてのアイデンティティだと思っていましたし、記録が選手を続けるモチベーションになってもいました。『20″03出したら次は20″02出さなくちゃ』という感じです。でも、今思えば、『走りたい』自分に向き合うこととは別に、誰かの期待に応えようとし過ぎていたのかもしれません。すると段々、走る事よりも、タイムという答えの無いものに執着するようになってしまいました。選手たちが挑み続けるタイトルを自分が持っていた時間があまりにも長いために、今だからこそ、その時の凄味や価値を客観的に分かるようになってきたのかもしれません。16年経って、自分も年齢を重ね、アスリートとして記録を破られたら、悔しい気持ちと、『やっと記録が更新された!』と喜ぶ気持ちと両方を感じるでしょう。自分の記録が破られたくないと思う一方、若い選手たちにもっと頑張ってほしい、もっと良いタイムを出してほしいという葛藤というか矛盾ですね。でも、これも人間らしいのかなと(笑)」

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アスリートとして生きることは、尊さもあると同時に、勝ち負けで存在の意義が決められる修羅の道に挑む人生。今まで、数え切れないほどの選手の成功と失敗を見てきたと言う。様々な選択肢があるはずの少年時代に、末續がこの道を決めた理由はなんだったのだろうか。

「単に選択肢が無かったんです。得意な陸上しか生きる道がなかった。小さな頃から自分の個性を表現できるのは走ることだけだったんです。走ることが人生だと思っていました。メダルを獲るとか、記録を出すとか、競技者としての欲求は満たしたのかもしれない。今も走り続けることが出来ているから、充実はしています。今年から解説をさせて頂いたり、選手の指導をするようになりました。これまで自信が無かったのですが、アスリートとしての自分の経験値がある点に到達したと思えたので、責任を持って解説したり、指導したりできるようになりました。言い切れる何かが無いと、立ってはいけない場所だと思っていたので。今は、いち競技者として他者を判断できる線が引けるようになったのかな。それでも悩みますけれど(笑)競技者の気持ちが分かるからこそです」


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そして、話しはパーソナルな方向に広がった。解説者としてメディアに出る仕事が増え、スタイリストさんに衣装を選んで頂くうちに、おしゃれというのは、遊びつつ、大事な部分は最小限に抑えるのが良いということが分かってきたという。

「協調するところと、抑えるところが分かっていると、カッコよくなる。おしゃれって空間的だな、ということを教わりました。今の走りに対してのスタンスも似ていて、空気感で自分が何をすべきか分かった時に、余計なことをしなくなって、パフォーマンスが高まるのです」。

今回、末續はハンティング・ワールドの世界に接して、創設者ボブ・リーの生き方に共鳴する部分を感じたという。メダルや記録を手にしながらもさらに100%の走りを求め続ける彼と、ビジネスの成功を手にしても、自然や動物への保護活動と、商品クオリティの向上を探求し続けたボブ・リー。存在する場所は違っても、二人の飽くなき「探求心」はリンクするところがある。極めるべきは、磨き上げ、研ぎ澄まされた「点」だと信じていた過去の自分。しかし、それはもっと広く、空間的なものであることが分かったと末續は話す。

「仕事も走ることも同じだと思います。以前は、自分1人で力をひねり出して走っていた。でも本当は広範囲に渡る自分の周りの全てのものから力を得て走る方がパフォーマンスも高まるはずなのです。僕はまだ、競技者としてそれを感じられていないのかもしれません。それを全て体感し、走りで表現できた時に、誰かから金メダルを頂くのではなく、自分が自分自身に与えることができるのかなと考えています」


末續慎吾◎プロ陸上短距離選手1980年生まれ。熊本県出身。2003年 200m 20秒03日本記録保持者。2003年世界陸上パリ大会、200m3位。2008年オリンピック北京大会 4×1リレー3位(銀メダル)等、日本の陸上史に輝く記録を残す。ミズノ在籍を経て  2015年4月よりプロ陸上選手として独立し、現在、アシックスジャパンのアドバイザリースタッフ、星槎大学特任准教授も兼任する。2018年自身のチーム「EAGLERUN」設立。     



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今年9月にはラグビー元日本代表ヘッドコーチ エディー・ジョーンズ氏とのコラボレートバッグが発売される >
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