産後院という選択も。出産後に夫ができるサポートとは

.


安産で母子ともに健康ならいいのですが、そうではないこともあります。よく眠ってくれる赤ちゃんもいるかもしれませんが、まったく泣き止まず、大変なこともあります。高齢出産であれば、母親の体力も低下しており、問題が生じる確率も高まります。

そもそも、ヒトの赤ちゃんは他の哺乳類と比べて3カ月ほど早く産まれるという学術的な指摘もあります。つまり、生まれた状態では未熟ということ。というわけで、筆者は出産から3カ月は育児のために体を空けようと、仕事を調整しました。これは正解でした。



筆者の経験では、産後100日、特に直後の50日は重要です。この立ち上がり期に躓くと、後に響きます。雇用主の企業も、とくにこの期間に父親の育休がとれるようにするとよいと思います。

数カ月前になりますが、イラストレーター小松良佳さんの「産後のお母さんを助ける漫画」が共感を呼びました。それは、国の支援で2人1組のスタッフが自宅に来て、最長8時間手伝ってくれるチケットを発行するという、産後にあったらいいなと思うサービスを描いたものでした。

助産師など正式な専門家でなくても、やれることはあります。励ましたり、愚痴を聞いたり、見回りするだけでも意味があるでしょう。時間のあるシニアが、祖父母がわりに見てくれるだけでもプラスだと思います。国や自治体には、こうしたところに効果的な策を打っていただきたいと思います。

妻の「孤独」を理解し、冷静にサポートする

2017年から「ワンオペ育児」という言葉が広まりました。母親にとって最も身近なパートナーである父親(夫)が、同居でも育児に参加せず、実質は妻1人で行っているケースは数多いでしょう。参加している“ふり”でしかない、という話も耳に挟みます。

妻が孤独にさいなまれているのに、会社から遅く帰ってロクに話もせず寝ている人、「赤ちゃんおめでとう。お祝いに飲もう!」という誘い(こういう誘いが少なくないのも事実)に乗って、家庭を放ったらかしにする人もいるかもしれません。

とくに、赤ちゃんの授乳サイクルが出産直後とあまり変わらずに続くと、母親は疲労困憊、かつ赤ちゃんと自分だけという孤独感が強まります。

筆者の友人のベンチャー企業では、新生児を持ったママ向きのワークショップを告知すると、あっと言う間に満員札止めになるそうです。赤ちゃんと一緒に外出できることも限られている母親はこういう機会に飢えています。

前出の「妻に何を言われてもガンジーじゃないけど、ただ受け止めるしかない」は筆者だけが特別なケースではないでしょう。

出産直後、女性はホルモンが乱れています。そこにストレスや睡眠不足が加わると、孤独感や産後うつなども出てきます。すると、変なことを言ったり、おかしなことをしたり、感情的になったりもします。それにロジカルに言い返したりすることは火に油を注ぐようなものです。

だから、妻の状況を理解して(理解する努力をして)冷静に対応することです。産後の離婚の理由の1つは、夫がこうした妻の状況をわかってやれてないことではないでしょうか。
次ページ > 台湾に根付く「産後院」という文化

文=本荘修二 写真=Getty Images

ForbesBrandVoice

人気記事