日本の半導体素材・生産装置メーカーにも同じことが言える。
これらの国産サプライヤーは1980年代から90年代にかけての「電子立国」時代には国内の半導体やエレクトロニクスメーカーとの取引で製品開発力を世界最高レベルへ引き上げ、日本企業の没落後はサムスン電子やLG電子、SKハイニックスなどの韓国メーカーと取引することで技術レベルを維持してきた。韓国企業との取引が細れば、国産サプライヤーも世界最高レベルから転落するのは避けられない。
半導体向けの素材や部品はサプライヤーだけで開発できるわけではない。
死活問題の韓国 「内製化」にカジ
「日本の素材や部品、生産装置がなければ、韓国の半導体・エレクトロニクス産業は壊滅する」との声も聞こえる。だが、1970年代に欧米先進国が日本企業に市場を奪われ、半導体や薄型液晶テレビで一時は世界を制した日本企業が韓国企業に追い抜かれたことを考えれば、あまりに楽観的すぎる。
一方で「半導体やエレクトロニクス産業が崩れれば、韓国経済は破綻する」という見方は正しい。韓国貿易協会の統計によれば、2018年の韓国からの半導体輸出額は輸出総額の21%を占めている。しかも、付加価値が高い。それゆえに韓国も必死だ。仮に何らかの政治的妥協で日本の輸出規制が解かれたとしても、二度と同じ手を食わないように国策で半導体素材や部品、生産装置の内製化を急ぐだろう。
ムン・ジェイン政権は輸出規制品の内製化を舵を切った(韓国大統領府ホームページより)
事実、日本政府による輸出規制の動きを察知した韓国政府は半導体研究開発予算の縮小を見直し、2019年6月に半導体関連産業強化のための「製造業ルネサンスビジョン」を発表。2021年から年額約8300億ウォン(約770億円)、6年間の総額で5兆ウォン(約4600億円)を半導体材料・部品分野へ投入することを決めた。さらに輸出規制強化が明らかになると、これを毎年1兆ウォン(約920億円)に引き上げている。
日本政府や経済産業省は「あれは韓国にお灸をすえたのであって、さらなる輸出規制強化や禁輸を考えているわけではない」というのが本音のようだ。が、韓国にとっては「死活問題」そのもの。韓国政府が進める内製化の動きを止めるのは難しいだろう。
韓国の半導体・エレクトロニクス関連の素材や部品、生産装置の内製化は韓国向け輸出の激減だけでなく、「共同開発」の機会を失い製品技術力が低下することで日本のサプライヤーの国際競争力にも打撃を与えるだろう。欧米や中国市場でも韓国製の素材や部品、生産装置との競合にさらされ、現在は70~90%を占めている世界シェアを失うおそれもある。
そうなる前に経営不安をおぼえた国内サプライヤーが、海外の投資ファンドや企業からのM&Aを受け入れる可能性もある。日本では数少なくなった国際競争力の高い企業や技術が、国外へ流出することにもなりかねない。
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