それを和らげるのが、植物の自由な線や形、影であり、色やその濃淡などの部分です。都市の生活者の方で、100%人工的な線に囲まれている方もいると思います。それでは、ストレスが溜まる一方。これからの時代は、緑が常に視野にあるような環境が必要だと強く感じます。
室内にも動き、音、季節感を
ただ、室内にどれだけ緑を入れても、自然とは違うポイントがいくつかあります。
まず、自然界の緑というのは、風が吹くから、動きがある。風の揺らぎや川の流れ、鳥など動物の動き……。室内は風が吹かない分どうしても動きがない。そして音です。鳥の声、虫の声、波の音、水の音など自然の中では、耳にも響くものがあります。
parkERsのオリジナル什器。水音と揺れる影が天井に映る。
だから、「室内に公園」をデザインする場合、緑に加えて、なるべく水を使って動きや音を演出すると、より人間の本能に即した環境に近づくのではないか。そういう要素を大切に考えています。
また、観葉植物も良いのですが、一つ残念なことに季節の移り変わりというものが感じられません。本来の自然では、間々にちょこっと花が咲いて、その花を見ることによって色の変化を感じるし、季節感、季節の移り変わりを感じるものです。理想的なことをいえば、緑がいっぱいあるなかに一輪で構わないので季節の花を入れるような生活がいいですね。
水滴が落ちて、波紋の影を映し出すことで空間に動きを生む照明装置。天気と連動しており、室内にいても外の天候を感じることができる。
人は、フェイクには生命を感じません。生きているものからこそ、新芽、色の濃淡、枯れなど、変化を感じられる。そんな自然を求めるのが、人間の「本能」です。
最近では、人気の旅行先はバリ島の田舎など自然を感じる場所だと言います。一昔前は、ニューヨークやロンドンなど、都会が人気でした。自然がある場所で、何をするわけでなく、水の音や鳥の声、葉音を聞いてリラックスする。それは決して贅沢ではなくて、本当に人が生活すべき環境なのでしょう。そういう空間を、日常にもっと増やしていきたいと思います。
連載:Living With Flowers Every Day
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