ストラスブール残留の36歳川島永嗣 複数年契約の快挙を勝ち取った「ぶれない生き様」

川島永嗣(Anadolu Agency / Getty Images)


ワールドカップ・ロシア大会を戦い終えた後の昨年8月末に、川島はストラスブールへ1年契約で加入した。リールセSKとスタンダール・リエージュ(ともにベルギー)、ダンディー・ユナイテッド(スコットランド)、FCメス(フランス)に次ぐヨーロッパで5チーム目。よほどの緊急事態が発生しなければまず出場機会が訪れない、第3ゴールキーパーの立場を努めて前向きに受け止めた。

ストラスブールはベルギー代表のマッツ・セルスを正守護神に、元U-21フランス代表のビングル・カマラをセカンドキーパーにすえた。27歳のセルスはリーグ・アンで、22歳のカマラはフランスリーグカップでゴールマウスを守り、後者の大会でストラスブールは頂点に立っている。

川島が第3ゴールキーパーを経験するのは、実は初めてではない。2016年8月に加入したメスで、そして約4か月間のブランクをへて同年10月に復帰した日本代表で、プレー以外の役割を託された。当時の日本代表を率いていたヴァイッド・ハリルホジッチ監督は、メスで出場機会を失っていた川島をあえて復帰させた理由を、聞き慣れない「メンタルプレーヤー」という言葉に帰結させた。

「永嗣は発言力も経験もあるリーダーの一人であり、チームにいいスピリットももたらせてくれる。厳しい戦いにおいて、グループにおける永嗣の存在感が必要になってくる。第3ゴールキーパーをメンタルプレーヤーとして扱うのは、各国の代表チームでよく見られる。永嗣にはその役割を担ってほしい」


Robert Cianflone / Getty Images

無所属の困難からも逃げることなく立ち向かう

もっとも、出番が訪れない可能性が大きい、精神的にも極めて厳しい状況下においても、川島のモチベーションは萎えなかった。たとえばメス時代には十代の若手たちとともに、リザーブリーグでプレーする時間の方が多かった。当時の心境を、こんな言葉で表したことがある。

「ベンチ入りのメンバーにも入れていないので、その意味では自分にとっては難しい状況ではある。ただ、こうなる状況を承知のうえで契約しているので。ヨーロッパのなかでも大きなリーグでのチャレンジですし、日本人のゴールキーパーとしてどこまでできるのかを、日々突き詰めていきたい」
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文=藤江直人

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