ストラスブール残留の36歳川島永嗣 複数年契約の快挙を勝ち取った「ぶれない生き様」

川島永嗣(Anadolu Agency / Getty Images)


それでも計り知れないほど大きなプレッシャーと、メスで試合に出ていない不安とも戦っていたのだろう。UAE戦後に更新されたオフィシャルブログで、川島は敵地のスタジアムのロッカールームで、人目をはばからずに号泣した事実をこんな言葉とともに明かしている。

「多分、この涙は死ぬまで忘れない涙だと思います」(原文のまま)

直後にメスでもレギュラーへ緊急昇格し、リーグ・アン残留に貢献した。ストラスブールに移ってからは「時間とエネルギーもあったので」と週に一度、マーケティングとファイナンスの講義を受け、自分自身を多角的に見る時間と機会を作りながら日々の練習に打ち込んできた。

「昨シーズンは試合に関われない時間の方が多かったので、パフォーマンス的に何かを得られたかと言えば別に何もない。ただ、自分のなかにおいて、サッカーに対する高みに挑戦したいという情熱はまったく変わらないし、次に向かっていくうえで気持ちも充電できたし、体のコンディションもよりよくなってきている。その意味では、昨シーズンはいい時間になったと思っている」

長谷部との変わらぬ盟友関係


昨シーズンが終盤に差しかかった5月2日に、川島はドイツへ足を運んでいる。日本代表で長く一緒に戦ってきた盟友、長谷部誠がリベロとして眩い存在感を放っているアイントラハト・フランクフルトが臨んだ、強豪チェルシーとのUEFAヨーロッパリーグ準決勝第1戦を応援するためだ。

いまも忘れない2010年5月30日。ワールドカップ・南アフリカ大会の開幕直前に、オーストリア・グラーツで行われたイングランド代表との国際親善試合で、当時の日本代表を率いていた岡田武史監督は低空飛行が続いていたチームにカンフル剤を打った。

故障の影響もあって精彩を欠いていた司令塔の中村俊輔を先発メンバーから外し、システムも[4-2-3-1]から[4-1-4-1]に変更。ゲームキャプテンをDF中澤佑二から長谷部へ、ゴールキーパーを楢崎正剛から川島へと代えた荒療治が、下馬評を覆してのベスト16進出への呼び水となった。
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文=藤江直人

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