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フォーブス ジャパン編集部 エディター


豊原:全体最適を図るために自分を殺す部分。でも自分を殺してしまったら、やりたいことできないんじゃないの。そのせめぎ合いを毎日している。

悔しくて眠れない夜もある。それでも前に進んでいて、自分のやりたいことが実現して嬉しい酒を飲むときもある。その両方が積み重なりながら転がっている。

最終的な答えとして、それが結局どこに出ていくかは分からない。それでも今回一緒に組んでくれているスタッフの人たちや力を貸してくれている人たち、現場のスタッフたちが、まだヨチヨチ歩きだけど少しくらいは豊原、小泉がやろうとしていること、生きがい、気概を見守ってみようか。そんな気持ちを持ってくれている。それはすごく有難いことで、自分たちが先に倒れてはいけない、と強く感じています。

みんな、勝手に「無言の圧力」を感じてしまっている

──俳優、女優たちは少しずつ窮屈な思いを強いられてるんじゃないか。そんな感じがします。

豊原:恐れているんですよね。仕事を失うことに対して。俳優や映像作家が、そもそも仕事を失う観点を持ってキャリアをスタートしていない。みんな、子どもみたいな気持ちで始めているわけです。それがいつしか「仕事を失うんじゃないか」という恐れを感じてしまっている。

テレビに出られなくなる、CMに起用されなくなる、生活ができなくなる、映画が撮れなくなる。無言の圧力をみんな勝手に自分の中で感じてしまっているわけです。自分自身もそういう思いをすることはあるんですが。



小泉:もともと、そうした無言の圧力を感じない世代の人たちですら、感じてしまっている。そうすると、いまの若い人たちは事務所も含めて、その考えから始まっているのでキツイだろうな、と。

そのまま「これが俳優という仕事なんだ」という価値観のもとで育っていってしまうのかと思うと、すごく不安ですね。何と言っても、私たちは勝新太郎さんなど個性豊かな先輩方を見ている世代ですからね。当時はかなり自由でしたよ。

豊原:それでいて映画監督や演出家が非常に厳しかった。俳優もみんなプライドを持っていたので緊張感というか、力と力のぶつかり合いみたいな雰囲気があった。また女優も品とプライドを持って現場に入ってくる。

そういった現場の雰囲気をギリギリ感じている世代なんですよね。決して同じようなことを前時代的にやれという思いはないのですが、魂を持っている人間からすると少し寂しい部分もある。若い俳優、女優たちにもそういった思い、気概を持った人がいるんですよ。そういった人たちからすると、いまの日本の映画業界、物足りないんだろうな、と思うんです。

文=新國翔大、写真=小田駿一

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