親から子どもに教育費や住宅購入資金など大きなお金が一度に動くときは、「教育資金贈与信託」や「住宅取得等資金贈与の特例」などで贈与の事実をはっきりと残すことができる。けれども、「専業主婦である妻に、毎年50万円を生活費と別にあげる」「毎年100万円ずつ孫名義の口座に積み立てる」といったケースでは、贈与税の基礎控除(110万円)以内であるため、注意を払わない人も多い。
ところが、こうしたケースで、せっかく渡したつもりのお金が、本人死亡時に贈与であることを否認され、相続財産に含めて再計算されてしまうことはありがちだ。贈与はあくまで「契約」であることを理解して、お金をあげるときはそれが本当に贈与であると認めてもらえるように工夫しておくことが大切なのだ。
細かく言えばいろいろあるが、主なものとしては以下の3点だ。
1. 贈与契約書を作成する
2. 振込みなどで贈与の証拠を残す
3. 預金通帳・印鑑は、贈与を受ける側(子どもなど)が所有・管理する
その上で、その贈与が「定期贈与」と認定されないことが重要だ。毎年繰り返し贈与を行なうこと自体は問題ないが、それが定期贈与、つまり、あらかじめまとまった総額を贈与するつもりで計画的に贈与しているとみなされると、その総額に対して課税されて重い贈与税を負担することになる可能性がある。
贈与を否認されて相続税の課税対象とされてしまうことがないように、また、「定期贈与」とみなされて想定外な贈与税を負担することがないように、税理士などの専門家にアドバイスを受けるのがおすすめだ。
生前贈与機能付きの保険とは
さて、生前贈与を検討するにあたり、ひそかに話題を呼んでいるのが生存給付金付きの生命保険。生命保険はもともと、相続財産の圧縮効果がある。たとえば、家族が妻と子ども2人なら1500万円(=500万円×法定相続人数3人)までの死亡保険金を相続財産の対象から外すことが可能だ(死亡保険金受取人が被保険者の相続人である場合)。
加えて、毎年1回「生存給付金」を指定した人に支払う仕組みが付いた生命保険であれば、生前贈与を楽にできるメリットがある。たとえば、一時払保険料1500万円を払い込み、年100万円の生存給付金の受取人に子どもを指定しておくと、10年間で計1000万円を子どもに贈与できる計算になる。