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マイクロ波化学社長 吉野巌(左)と、アメリカン・エキスプレス法人事業部門の須藤靖洋GM兼副社長(右)。photographs by Kenta Yoshizawa

11月に開催された「Forbes JAPAN CEO CONFERENCE 2019」でプラチナスポンサーを務めたアメリカン・エキスプレスは、化学ベンチャー企業「マイクロ波化学」に特別賞を贈った。今、アメックスが思う「未来に求められる企業」とは、そしてその期待を受けるマイクロ波化学が見据える未来とは?


未来に求められる企業とは何か。

スタートアップが続々と誕生し、目覚ましい活躍を見せるいま、アメックスの法人事業部門ジェネラル・マネジャー兼副社長 須藤靖洋は、「Forbes JAPAN CEO CONFERENCE 2019」で表彰するアメックス特別賞の選考に頭を悩ませた。

「新しいことにチャレンジし続ける、日本から世界に向けてイノベーションを起こせる企業こそが、ふさわしいのではないか」

そんな時、ふと、ある企業が掲げているマニュフェストが目に留まった。

“100年以上も変わることがなかった化学産業にイノベーションを起こすこと、これこそが我々のミッションです。”

マイクロ波化学の言葉だ。「この会社は“世界が知らない世界をつくれ”というビジョンに偽りなく、従来の化学品の製造工程に大きな変革を起こす可能性のある技術を持っている」。

須藤の気持ちは固まった。「マイクロ波化学の技術があれば、世界中の工場の消費エネルギーや設備投資・製造コストを大幅に削減することができます。エネルギー問題、自然環境の問題などはこれからさらに重要な課題となっていく。同社の事業は、その課題と向き合い、世界をより良く変える可能性を秘めていると感じたのです」。

経済産業省によれば、日本における化学産業の消費エネルギーは、製造業全体の4割程度を占めるという。マイクロ波化学の技術があれば、これを従来の3分の1程度にまで減らせる可能性がある。

そもそも、マイクロ波化学とはその名の通り、電磁波の一種である「マイクロ波」を活用して、「化学」物質を製造するテクノロジー・ベンチャーだ。

「私たちが事業化した技術は、電子レンジに使われている、あのマイクロ波です。カップに牛乳を入れてレンジで温めると、マイクロ波は牛乳の分子に直接熱を加えるため、カップは熱くなりません。一方、ガスコンロで温めた場合、鍋から伝わった熱が中の牛乳を温めます。前者のほうが、熱効率が高く時間もかからない。ところが後者の、効率の悪い方法を使い続けていたのが、化学産業の巨大プラントでした」(マイクロ波化学社長 吉野巌)

マイクロ波技術自体は新しいものではない。しかし、この技術を応用して化学物質の製造プロセスを効率化しようという事業は、同社の創業当時、世界中のどこにも存在しなかった。

「実は、日本の化学メーカーも、ほとんどがマイクロ波を研究していました。ところが大型化が難しく、産業への展開ができなかったのです」(同)。

そんな革新的な技術をもってしても、ここまでの道のりはまさに茨の道。技術的に確かであることはわかっていた。技術導入を勧めると、メーカー側も理解してくれる。

だが、「面白いね。で、どこにプラントがあるの?」と聞かれると、話に詰まる。「御社が第1号です!」。そこで、話は終わり。吉野は何度も、そんな会話を繰り返してきた。みな、前例のない技術の導入には二の足を踏んだのだ。

自社プラントを立ち上げ一気に変わった風向き

「マイクロ波の研究者であるパートナーと出会い、会社を立ち上げました。『3年でなんとか形になるだろう』と考えていましたが、会社はすでに13期目。いまだに試行錯誤を繰り返しています(笑)」(同)


アメックス特別賞を受賞したマイクロ波化学社長 吉野巌。photographs by Gyo Terauchi

ベンチャー・キャピタルから資金導入し、大阪・住之江に自社プラントを完成させたのが2014年。事業化のプロセスがようやく本格化したのは、そこからだった。

技術導入第1号の顧客は、老舗のインキ・メーカー。新聞用インキの原料になる脂肪酸エステルを出荷することができた。

「当時のCTOの方が、新しい技術に対する思いの強い方でした。非石油原料を使いたいというニーズもあり、納入することができました。これが実績となって、引き合いが増えていったのです」(同)

創業から13期目にして、黒字転換を果たしたマイクロ波化学。10年を超える試行錯誤を経て、「ようやく成長のフェーズに入った」と吉野は言う。

「『エネルギーコストを劇的に下げたい』とか『従来の方法ではつくれないものをつくりたい』など、ポイントを絞った相談が、年間に100件以上来るようになりました。着手しているプロジェクトも20以上。社員には苦労をかけていますが、ここが勝負どころだと考えています」(同)

ベンチャーだからこそのスピード感を生かし、正面突破で大テーマに挑む。それが、吉野の真骨頂だ。

「ベンチャー・キャピタルには、『ひとつかふたつの事業に集中しろ』と言われますが、いまは無理してお金を集めて、ガンガン攻めています。医薬品、電子材料、食品化学とプロジェクトは幅広い。液体、固体、気体とすべてやって、得られたナレッジは必ず強みになる」(同)

須藤が期待した通り、マイクロ波化学は、すでに世界的化学メーカー・BASFとの協業など、グローバル展開の端緒をつかんでいる。近い将来、欧米に拠点を設ける検討に入っている。

「いまもそうですが、やったことの結果を出さなければならないと思うんです。途中でやめちゃいけないし、検証しきらないと気持ち悪い。社会問題に取り組む意義も、もちろん感じます。誰でもきれいな空気を吸いたいし、限りある資源からつくるエネルギーをガンガン使い続けていいとは思っていない。そんな普遍的な課題に対し、ビジネスで解を見つける。やりがいのあるチャレンジです」(同)

日本の化学産業は、欧米の技術導入をベースに成長してきた。それから100年経ち、日本発のテクノロジーがグローバルに産業を変える。マイクロ波化学の事業には、そんな可能性を感じさせる。

「小さい会社だからこそ、世の中にインパクトを与えることができる」。

それが粘り腰で事業を続けてきた、吉野を支えた信念だ。

「日本のスタートアップを支援したい」―アメックスがいま、できること


須藤靖洋(左)と吉野巌(右)。photographs by Gyo Terauchi

アメックスはなぜ、スタートアップ支援に力を入れるのか。須藤は語る。

「多くの場合、スタートアップは創業時に経営資源の三要素である『ヒト・モノ・カネ』が足りていません。そうした中での事業継続の大変さを、皆さん口にされます。ならば、スタートアップや個人事業主様向けのビジネス・カードを通じて、私たちにできる支援をしたい。例えば、ビジネス・カードは法人登記後すぐに申し込みいただくことができるため、起業してすぐに、オフィスの立ち上げ、サーバー代、経費精算などの決済手段として使っていただくことが可能です。日本から世界を変える企業が生まれてほしい。そして、皆さんのパートナーでありたいと願っています」


須藤靖洋◎1990年、アメリカン・エキスプレス・インターナショナル,Inc.入社。2015年に個人事業主、中小企業経営者、大規模法人向けサービスを統括する法人事業部門副社長に就任し、16年よりジェネラル・マネジャー兼法人事業部門副社長。

吉野巌◎2000年に三井物産を退社し、カリフォルニア大バークレー校で経営学修士課程を修了。米国でベンチャー支援事業やコンサルティングを経験し、07年にマイクロ波化学を設立、代表取締役社長CEOに就任。技術経営(MOT)日立フェロー。

そう、ビジネスには、これがいる。
アメリカン・エキスプレス

Promoted by アメリカン・エキスプレス / text by Toshihiko Masugi / photographs by Kenta Yoshizawa, Gyo Terauchi / edit by Miki Chigira

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