それら世界水準のリーダーを輩出し続けるインドの教育は、何が優れているのだろうか? インド工科大学ボンベイ校(IIT Bombay)の客員教授でもある北九州市立大学の永原正章教授の話を基に、まとめてみた。
「世界最難関」のインド工科大学
インド工科大学(Indian Institute of Technology)は、「IIT」の略語で知られるインドでトップクラスの大学だ。インド国内に23ものキャンパスを持っているが、その入試は「世界最難関」とも呼ばれており、100万人以上が受験して、1万人程度がその席につける。
IITの合格者は、成績上位から順に、希望するキャンパス・学部を選ぶことができる。なかでも、永原教授が客員教授を務めるIIT Bombayは人気があり、とくにそのコンピュータ・サイエンス学部は、入試成績順位でおよそ50位以内に入らなければ入学できない。
入試は数学・物理・化学の3科目で、選択式。難易度は、日本のセンター試験並みであるが、制限時間が短く、スピード勝負でもある。また間違った解答は減点されるので、日本のように「わからない設問は鉛筆を転がす」というようなこともできない。
そのような難関の試験で、ほぼ満点近い得点を取らなければ、IIT Bombayのコンピュータ・サイエンス学部には入学できないのだ。
インドでは、IITに合格すれば、それだけで周囲から尊敬され、田舎の農村からの合格者などは新聞の一面記事になったりもする。また、IITの学生はとてもプライドが高く、自らをIITianと呼ぶ。
ボンベイの街並み (c)Silicon Valley Ventures
超秀才を産むIITの教育
過酷な受験戦争を勝ち抜いたIITの学生たちを待ち受けるのは、またまた大学でのスパルタ教育である。授業では、多くの宿題や抜き打ち試験が続き、気が抜けない。大学での成績により学生は順位付けられて、それが卒業後の進路に大きな影響を与える。したがって、IITの学生たちは大学入学後も必死で勉強する。
学部ではデュアルデグリー(dual degree)という制度があり、5年間でバチェラーとマスターの両方の学位を得ることができる。優秀な学生はこのデュアルデグリーにチャレンジする。
デュアルデグリーの学生は就職も良好で、GAFAやマイクロソフト、IBMなどのIT大手のほか、ゴールドマン・サックスなどの金融業界からも引く手数多である。
また、欧米の一流大学へPhDを目指して進学する学生も多い。IIT Bombayでの永原教授の博士課程向け講義にも、デュアルデグリーの学生が参加しており、とても優秀だったそうだ(その後、インドの一流航空宇宙企業への就職や、UIUC(イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校)、UC Berkeleyなどのアメリカの一流大学への進学が決まったという)。