世界38カ国、800万人が愛読する経済誌の日本版

(ドナルド・トランプ大統領に扮した俳優・アレック・ボールドウィン GettyImages)

米国のテレビ業界と政治には、実は日本からは見えにくいユニークな関係があるようだ。

たとえば2015年11月、大統領選に立候補中だったドナルド・トランプ現大統領がアメリカNBCの某番組に「12分5秒」出演した際、共和党の別の候補者4人が同じ長さの放送に出演することを要求し、NBCはこの要求に応じたりしている。しばしばメディアを「フェイク・ニュース」と攻撃するドナルド・トランプ氏とメディア業界も「敵対」だけではない関係があるようだ。

2013年〜2017年、朝日新聞社でアメリカ総局長を務め、帰国後は共著で『現代アメリカ政治とメディア』も上梓した山脇岳志氏に、アメリカのテレビと政治の関係についてご寄稿いただいた。


全米で「平均1100万人以上」が見た超人気パロディ番組

2013年から2017年までワシントンに駐在し、ドナルド・トランプ氏が当選したアメリカ大統領選も取材した。土曜日の夜は、NBC放送のコメディー番組「サタデー・ナイト・ライブ」を楽しみにしていた。

1975年に始まった同番組は、政治や社会風刺のパロディー番組として人気がある。2016〜2017年にかけてのシリーズは、俳優のアレック・ボールドウィン氏がトランプ、女優のケイト・マッキノン氏が民主党候補のヒラリー・クリントン氏にそれぞれ扮した。同番組としては23年ぶりの高視聴率を記録し、全米で平均して1100万人以上が番組を見たといわれる。


「サタデー・ナイト・ライブ」より(GettyImages)

2016年秋、CNNが主催した大統領選の討論会の後に放映された「サタデー・ナイト・ライブ」は、この討論会をパロディーにし、YouTubeで2700万回以上再生されている。トランプ氏の「China」の発音は何度みても面白い。クリントン氏の真似もよく特徴をとらえている。



人気コメディアンがホストを務める深夜のトーク番組でも、政治ネタが頻繁に出てくる。代表的なのは、スティーブン・コルベア氏の「ザ・レイト・ショー」、ジミー・ファロン氏の「ザ・トゥナイト・ショー」、トレバー・ノア氏の「ザ・デイリー・ショー」など。その日のニュースを題材に番組を進行し、政治家などを風刺して笑いをとる。

深夜のトーク番組は「公民教育」?

最近は、トランプネタにも飽きが出てきたのか、深夜のトーク番組は全体的に視聴率が低下気味だが、アメリカを代表するコメディアン・俳優の一人で、トランプ氏に辛辣なことでも知られるスティーブン・コルベア氏の「ザ・レイト・ショー」は堅調のようだ。USA Todayの昨年末の記事によると、2018年1月~12月9日までの平均視聴者数は376万人で、前年より5%伸びたという。

こうしたトーク番組は、移民や銃規制、セクハラ、ロシア疑惑といったハードな政治・社会問題も取り上げている。

メディアと政治の関係を研究するジョージタウン大学のダイアナ・オーウェン教授は「若い世代が、笑いを通じて、政治について知ることになり、(政府や民主主義の仕組みを学ぶ)『公民教育』にもなっている」と評価する。

若い世代は、新聞はもちろん、ニュース番組も見ない人が増えている。その中で、トーク番組などが政治知識を得る機会になっているとみる。

構成=石井節子

PICK UP

あなたにおすすめ

合わせて読みたい