ビジネス

2019.07.31 06:00

変化の時代に、いかに高くジャンプするか|中田敦彦 x 尾原和啓


中田:その根幹にあるのは何だろうと思ったんです。それで、最初はパンクだったのに、だんだんとお金をもらえなくなったらっていう恐怖で、丸くなっていくんだと気づいた。

尾原:メディアに従属的にならないとお金をもらえないかもしれないと。

中田:そういう圧倒的な恐怖が、芸人の発言を凡庸にしていく。それがどうにも堪え難かった。そういう思いを、芸人たちの中ではあまり共有できなかったんです。「僕の考えてるお笑いはあっちゃんとは違う」と。

それが僕は苦しかったんですよね、こんなのが芸人ですかって。「めちゃイケ」とか「ごっつええ感じ」とか、初期のパンクな感じのものをやりたかったはずなのにって。

ただ、たけしさんや談志師匠もそうですけど、最初は物議を醸しても、やり続けてるとどこかでみんな、「革命家だ」って手のひら返すでしょ。なら僕なりにやっていけばいいかって。



尾原:二年前かな、西野さん(キングコング西野亮廣)と対談した時に、「お笑いに必要なのは、世の中に違うってことを突きつけたい思いがあること。でもただ突きつけると暴力になってしまうから、それをお笑いとして包んで見せてあげる能力が必要なんです」っておっしゃってて。だから、「今、お笑いで売れる才能をもったやつは、起業家をやってる」って言ってましたね。

起業家は、「このまま波風立てずいけば、これで金持ちなれるやん」っていう風潮に対して、「嫌、違うだろ」って新たな生き方を定義するものだと。だから、例えばアマゾン創業者のジェフ・ベソスなんかもパンクですよね。「いいレビューも悪いレビューも載せるんだ」っていう、既存のものを壊していく発想を持っていた。中田さんも、起業家の方に近づいていってる気がします。

中田:まさにですね。高校生の頃、「爆笑オンエアバトル」という深夜のお笑い番組があって、その時、審査員に談志師匠がいらっしゃったんです。その時談志師匠が感慨深げに「今は漫才とかコントなんだな。才能のあるやつは輝いているジャンルに行くから、もしかしたら落語じゃねえのかもな」っておっしゃってた。自分のジャンルにこだわっちゃうとまだいけてるって言いたくなるところを、この人は「終わった」って言える。それがカッコ良くて。

才能は光るところにしか集まらないし、ゴールドラッシュにしかいかない。例えば「フィッシャーズ」みたいなユーチューバーが出てきて、彼らがすでに芸人という選択肢を選んでいないということ自体に、「既存のお笑いはもう終わったんだ」ということをはっきりと認識した。僕も生き方を変えないといけないと思ったんです。

文=小野田弥恵 編集=Forbes JAPAN編集部 写真=小田駿一

ForbesBrandVoice

人気記事