「コンプライアンス」という規制に閉じ込められている
豊原:実際、映画づくりに関わってみて感じたのは、映画の脚本を作って、資金を集めて、人を集めていくうちに「こうじゃなきゃいけない」という規制の中に入っていってしまう。この力はすごく強いんです。
関係者が増えていくにつれて、ひとりの監督、脚本家が「やりたかったもの」が結果、同じものになっていってしまうんだな、と。
規制に立ち向かっていくには、かなりの力が必要で。私たちもいま、映画を作っていて嫌だなと感じるのはコンプライアンス周りのことです。
例えば、ある俳優、女優に過激なシーンがあるとして、「なにかCMに出てるのか、どのテレビに出るのか、確認は、映倫は、、」と、ふと議題に上がり、考えてしまう。それに対して、「うん、そうだよね」と頷く一方で、「映画はもっと自由なんじゃなかったの?」という反発する力、矛盾が生まれてくる。
「そこを変えたかったんじゃないのか俺は……」という思いがありつつも、そうした小さなことの積み重ねが結果的にいまの日本映画の興行システムを形成していて、最終的なアウトプットが同じになっていってるんだな、と感じましたね。
小泉:従来の映像制作のやり方で頑張っている人たちも当然います。彼らも横に仲間が欲しいだろうと思いますし、私たちは私たちが良しとするやり方で映画をつくっていく。この取り組みが少しずつ大きくなっていけば、興味を持つ人が増えるかもしれないので、継続して続けていきたいですね。
今回、俳優、女優に関しては事務所も含めて“仲間”として参加してくださっているので、コンプライアンスもそこまで考えなくて良かったんです。そうした志でつながる仲間が集まったときにできることは、まだまだこの先も試せていけたら、と思います。
豊原:そろそろ映画制作ないし日本の芸能界と呼ばれるものにおける考え方は変わっていくだろう、という意識は前々からあったんです。独自性を打ち出して、純度の高い作品創りの場を作っていこうと、2015年に舞台や音楽イベントの企画制作会社「明後日」を小泉さんが立ち上げ、私が本格的に演出を手がけるようになり、その現実感は加速していきました。