世界歴代2位のクライミング女王に訪れた「楽しくない、辛い時」とその乗り越え方

プロフリークライマー・野口啓代


強調したいのは「楽しむことが大事」だということです。勝ちにいかなきゃという自分自身へのプレッシャーや、周囲からの「勝てるだろう」という期待を背負うことも大事ですが、楽しむ気持ちがなければ、いいパフォーマンスはできないし、いいパフォーマンスができなければ、勝つことだって危うくなる。だから、楽しむことは本当に大事なんです。

ただ「競技を楽しむようにしよう」と無理にマインドセットをしたことはありません。生まれながらにして、負のスパイラルに陥りにくい体質なんだと思います。好きだから続いているし、好きだからもっともっと上達したいという思いが、子どもの頃からずっと続いているんです。


野口はとにかく「楽しむことが大事」だと話す。(写真提供:ONE bouldering)

──今後の目標を教えてください。

まずは、2020年東京オリンピックで結果を出すことです。私はクライミングがまだマイナースポーツの頃から取り組んできました。初めて正式種目になった東京五輪に出場して、金メダルをとりたいです。

開催地が東京であることも、自分にとって大きな意味があります。もし開催地が海外だったら、出場にそこまでこだわらなかったかもしれません。これまでずっと自分を支えてきてくれた人がたくさんいる東京で、素晴らしいパフォーマンスをしてメダルを獲ることが恩返しになる気がしています。

競技としてクライミングをやるのは、次の五輪が最後だと決めています。もともと、自分は「好き」という気持ちだけでクライミングを続けてきたし、これからも好きでい続けたい。楽しむためのものなんです。オリンピックに出る頃には、2020年以降に自分がどうなりたいかもしっかりイメージしておきたいですね。子どもを産み、育てて、今までとは違う形でクライミングに携わっていくようになることもあるかもしれない。いま、まさに考え中です。

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野口啓代◎1989年、茨城県生まれ。プロフリークライマー。小学5年生の時に家族旅行先のグアムでフリークライミングに出会う。クライミングを初めてから1年で全日本ユースを制覇したことを皮切りに、国内外の数々の大会で実績を残す。2008年には日本人としてボルダリング ワールドカップで初優勝。ワールドカップ優勝は通算21勝。18年にはコンバインドジャパンカップ、アジア競技大会で金メダルを獲得。2020年東京オリンピックで行われる複合種目への活躍が期待されている。

構成=吉田彩乃 イラスト=Willa Gebbie

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