世界38カ国、800万人が愛読する経済誌の日本版


──スポーツクライミングの先駆者として長年、世界のトップで戦っています。クライミングに対してのわくわくする気持ちはずっと変わりませんか。

自費で世界大会に参加していた時期は、いわば趣味の延長のような感覚が強かったですね。自分のためだけに登っているので、楽しい気持ちしかありませんでした。それが変化したのは、10年ほど前から日本でもスポーツクライミングが競技として認知されるようになり、私にもスポンサーがついた頃です。周囲からメダルの獲得や勝つことを期待されたりするようになってきて、自分のために登っているのか、周りのために登っているのかわからなくなってしまうこともありました。


周囲の期待の高まりとともに、何のために登るのか、悩むようになったという野口(写真提供:ONE bouldering)

とても辛かったのは、去年です。初めて、クライミングが嫌いになりそうになりました。

去年の私の目標は、W杯の日本大会とアジア大会で優勝することでした。両方とも優勝することはできたけど、実は、W杯が終わったあとは気持ち的にすごく疲れていて、アジア大会はキャンセルしようかとさえ思っていたんです。結果がついてきたから良かったけど、ついてこなかったら、と思うと、怖いですね。

今振り返ってみると、あの時期は、持ち前の前向きな気持ちや、どんなパフォーマンスをしたいかをイメージする余裕がなくなってしまっていたんです。結果のことしか考えていなかったから、全然いいパフォーマンスができなくて、楽しくありませんでした。

──優秀な成績を残されてきた野口さんは、競技を楽しむと同時に、勝つことへのこだわりも強いと思います。いいパフォーマンスができずに勝てない、辛い時期はどのように乗り越えてきたのでしょうか。

もちろん、自分のなかでも勝つことへのこだわりはあります。でも、最初から勝ちたいと思ってやっているわけではありません。他の選手との競争なので、自分の力だけで勝ち負けをコントロールすることはできません。

大会で楽しみながら課題に取り組めるようにするにはまず、日頃のトレーニングで自分を甘やかさずにしっかりと修練を積むことです。自分に勝つことが大切です。本番で、絶対に次登らないといけないと思う場面できちんと結果を出すためには、日頃からしっかりとトレーニングを積み重ねておかないとなりません。日々の努力が自分の力になり、難しい課題を前にしてもひるまずに臨むことのできる自信になります。

構成=吉田彩乃 イラスト=Willa Gebbie

VOL.53

家事パートナーが共働き世帯を救う。タスカジ...

VOL.55 BrandVoice

人生100年時代に「普通」に女性が活躍するグロ...

PICK UP

あなたにおすすめ

合わせて読みたい