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2019.07.29

日本のカーシェア利用者、未来の使用法への道示す

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日本では、カーシェアリング利用者の多くが、レンタルした車を運転していない。朝日新聞によると、オリックス、タイムズ24、NTTドコモといったカーシェアリングサービス提供企業は、利用者の8人に1人の「移動距離がゼロ」であることに気付き始めた。

日本の利用者は、車を仮眠場所や、荷物置き場として使用するほか、打ち合わせやスマホの充電などに利用しているという。利用者を対象としたアンケートでは、食事をする場所を確保する目的で車をレンタルしたことがあるとの回答もあった。

車のレンタル料金は30分間で400円ほど。都内だけでもさまざまな企業がサービスを展開しており、スマホのアプリから簡単に利用可能だ。

これは、先見的な戦略の原則である「経済を変え、未来を変える」の究極の例だ。基本的な費用対効果の敷居が下がった時、思いもしなかったような新しい利用法が可能になる。人々は、予期しない展開があることを予期する必要がある。

消費者によって動かされる分野の将来を予見する場合、予期せぬ価格破壊が起きていたり、それまで長く続いていた価格基準が脅かされていたりする場所に注目しよう。かつては、コンピューターメモリーが高級品だった時代もある。メモリーの価格が下がると、「クラウド」などのさまざまな連鎖的製品が可能となった。

また、従来は難しかったことが簡単に実現できるようになる。利用に当たっての敷居が下がると、さまざまな新しい利用方法が生まれる可能性が出てくるのだ。

今回のケースでは、価格が低下し利用の手軽さが向上したおかげで、都市部での(ほぼ)プライベートな空間の低価格・短時間での提供という市場が、カーシェアリング企業の元へと突然舞い込んだのだ。

都会を動き回る人は時折、自分自身を「駐車」させる場所が必要になる。もちろん、ロッカーサービスや喫茶店もあるが、どれも人々のニーズをカーシェアリングより包括的に満たすものではない。

カーシェアリング企業が、車の居住空間の二次的使用を止めさせるため、レンタルしても運転しない場合に追加料金を科すこともあり得るだろう。これは、自らのビジネスモデルを守ろうとする行為だ。
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編集=遠藤宗生

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