──そう思った瞬間について詳しく聞かせてください。
初めて「当事者になった」と思ったのは、オープンセッションのときです。自分たちでステークホルダーを集めて、実際に参加してくださった方々に、自分たちの熱意や問いを伝えないといけない。他人事にはできなくなりました。
それを経て、僕だけでなく、チームにも大きな変化が生まれました。頭だけで考えるのではなく「一回皆で落書きを消そう!」と、最も現実味がある選択を、覚悟を持って決意したんです。
実際やってみると、やりがいもあるし、おもしろいし、自分自身が問題に向き合っていると実感することができました。そこから「次もまたやろうぜ」と繋がっていったのです。
先日、とある大学のボランティアサークルをやっているリーダーと話す機会があったのですが、その学生に、「落書き消しっていうのもあるよ」と伝えている自分が、とても熱く語っていることに気がつきました。動画も見せて、活動の魅力を語っていたんです。そしたら、学生の子も興味を持ってくれたんです。
最近では自己紹介する時にも、落書き消しの話をするようになりました。当事者になれたことで「つなげていこう」という気持ちになれたことが、自分の中での変化ですね。
──当初は「落書き消し」にどのように関わっていたのですか?
最初は活動用のビブスを作りました。ただ、こういう活動でビブスって普通だな、と思ったんです。それより、ひねりを加えた方がいいな、と。
すると、メンバーから「つなぎ」が欲しいという声がありました。でも、それも普通。考えた末、「コート」がいいんじゃないか! となり、今のユニフォームが完成しました。
このユニフォーム作りを通じて、「自分はボランティアに対するイメージを変えたいんだな」ということに気づきました。服装という視点からアプローチし、この取り組みに“憧れ”を持ってもらえるようにしたい。それによって「私もやりたい!」と声をあげてくれる人が増えていければ良いなと。それが、僕の会社と落書き消しという活動の接点になると思っています。
この活動を通じて発足した「一般社団法人CLEAN&ART」には、そのコートを買ってもらっています。もともとは、無料で寄付してもいいかなと考えていましたが、事業の継続性を考えた時に、CLEAN&ARTが販売することで活動費を得ていく循環の方がいいなと思ったんです。そのユニフォームを「お金出してでも買いたい」と思われるほど、活動への憧れを生んでいきたいなと。
今は、ユニフォームを活用したことで活動自体がどう変化していくのかに興味があります。デザインや服という切り口で、課題の解決にどう貢献できるか? この視点は、仕事でもよく考えることなので、落書き消し活動でも取り組んでいきたいです。
なんでも「便利なこと」を追求をしがちな時代ですが、ビームスが創業以来大事にしてきたファッションとカルチャーを、まちづくりの中でも発揮していきたいと思っています。