今回の数値はマーケティング企業のActiveViamが7月24日に開示したものだ。奇しくも同じ日に、米国のムニューシン財務長官は「アマゾンが米国の小売業界を破壊している」と述べていた。
ムニューシンはCNBCの取材で、特定の企業名をあげなかったものの「テック業界の独禁法違反について調査を進めたい」と発言した。
アマゾンは昨年、米国のEコマース市場の半分近くを握り、小売以外の売上を含めた総売上は2300億ドルを超えていた。ただし、ここで指摘しておくべきは、仮に2300億ドルの売上が全て小売によるものであったとしても、米国の小売支出総額の5%以下でしかないことだ。
つまり、アマゾンが小売市場を独占しつつあるという見方は、誤りだ。
しかし、アマゾンがEコマース市場の巨人であることは事実であり、多くの人がまず商品検索を行うのはアマゾンだ。さらに同社は数億アカウントのクレジットカード情報を保有しており、人々が最も気軽にショッピングを行える場所となっている。
また、他のEコマース業者と比べてはるかに多くのモバイル顧客を抱えている。「伝統的な小売企業がアマゾンを脅威とみなすのは、自然なことだ」とActiveViamの共同創業者の Kathy Perrotteは述べた。「アマゾンは膨大な顧客データと販売アイテムを利用して、常に最適な価格を顧客に提供できる。しかも、対応スピードは極めて速い」
ここでいう、スピードが小売企業を打ち負かす要因となる。小売企業の61%は十分なスピードで、価格を調整し競争優位性を高めることが不可能だと述べている。
もう一つ、課題となるのがデータのクオリティだ。小売企業の55%が、自社が保有するデータの質が不十分で、オンラインとリアル店舗の価格の精査を十分行えていないと述べている。
テック業界に独禁法の調査が及ぶ可能性は高いが、その進捗は緩慢で、一部の大手企業は対抗姿勢を見せるだろう。アップルは海外において複数の調査を受けており、民主党の大統領候補に名乗りをあげたエリザベス・ウォーレンは、フェイスブックやグーグル、アマゾンを公然と批判している。
アマゾンがトランプ政権の目の敵となるかどうかはまだ分からないが、ジェフ・ベゾスは既に大統領とつながりを持つロビイストを雇い入れ、対策を練っている。