彼が今年4月に立ち上げたユーチューブのチャンネル「中田敦彦のYouTube大学」は、開始後わずか1カ月で登録者数25万人を記録。その後もぐんぐんと数字を伸ばし、間もなく60万人にも届きそうな勢いとなっている。
「彼がすごいのは、ほかの芸能人とは違って、人気者(ユーチューバーや吉本芸人)と対談をするなど人の力に頼ることなく、全て自力でやっているところ」。そう語るのは、マッキンゼー、リクルート、グーグル、楽天など数々のプラットフォームビジネスに携わってきた尾原和啓氏だ。
Forbes JAPAN Webで「ポストAI時代のワークスタイル」と題した連載をする尾原氏はさらに、「彼の新しい働き方の勝ち筋の見つけ方は、泥臭く、でもかっこよく映る。その貪欲なヒットの作り方は、ある種、変化の時代のロールモデルだと思う」とも語る。
その成功の裏にあるものとは? ふたりの対談を前編・後編でお届けする。
尾原和啓(以下、尾原):日頃からインターネットウォッチをする中で、今年に入って一番びっくりしたのは、「中田敦彦のYouTube大学」の進化の速さです。先月は、ユーチューバーにおける登録者増加数でナンバー1になられてます。
今月はちょっと緩まっているけども、だいぶ伸びてます。今43万人ほどですね(対談した6月26日)。しかも恐ろしいことに、始められたのが2カ月くらい前。これだけの期間で40万人登録ってありえない話です。これができる中田さんの能力、これはもう東洋の奇跡だなと。ぜひ、その話をお聞かせいただきたいです。
中田敦彦(以下、中田):ぜひぜひ、なんでも聞いてください。
尾原:中田さんの成功って、ともすれば「説明がうまい芸人」の延長にも見える。実際、キングコング西野さんが「学ぶことを面白くする」をコンセプトに掲げて主催する大型イベント「サーカス!」にも参加されていて、中田さんはその中でもピカイチ面白いです。
でも、それだけでは説明がつかない感じがするんです。中田さんはずっとあがき続けていて、カオスをどこかで楽しまれてる印象がある。
システム用語に、「カオスエンジニアリング」という言葉があります。例えば、インターネットサービスがローンチするときって、必ずバグが生じるんです。どれだけ対策しても。つまり、トラブルを事前に対策するなら、むしろ極端な失敗を無数にシミュレートして、壊れるまでやりまくる。それで、壊れたところで初めて「なぜだ?」と見直して、それが対策になる、という考え方なんです。
中田:極端なカオスを意図的に産んで実験する。面白いですね。
尾原:そういう視点で中田さんを見たとき、どこまでが意図的な成功で、どこからがカオスから生まれた成功なのか、その境界に興味があります。というのも、僕はカオスの中であがきながら成功を生み出す力こそが、この混乱の時代、変化の時代に一番大事な能力なんじゃないかと思っているんです。