「努力」という言葉だけに満足していないか | 野村忠宏 #30UNDER30

柔道家 野村忠宏


「努力」という言葉だけに満足してはいないか、自分の努力がどこに向かっているのかを常に意識することが大切です。周りから見たら、わがままに取られるかもしれないけれど、信念のある取り組みをして、試合で勝って自分が正しいことを証明する。その積み重ねでしか強くなれないと思います。

その結果、オリンピック3連覇を達成。世界中が注目するなかで、自分の力を出し切りって結果を勝ち得たときの感動と喜び、これは何事にも代えがたいものでした。

「道」は続くよ、どこまでも。

UNDER30の方たちに伝えたいのは、まず、自分にとっての柔道のように、夢中になれるものがあるのは幸せだということ。それがある人は、諦めないで大事にしてほしいなと思います。たとえいまは結果が出ていなくても、夢中になれるものがあるならば、20代のうちはカッコつけずに、とにかく汗をかけ、と言いたい。

若いころの価値観なんて簡単に変わるものだから、頭で考えるよりも、たくさん行動して経験や体験を増やした方がいい。信じて動けば必ず学びがあるはずです。

特に自分が夢中になった柔道という競技は、「道」とついているように、攻撃や防御、技の稽古や礼節を通して、心と体を鍛え人間を磨くもの。世の中や社会のためになる己をどうつくっていくかを学ぶ方法の一つです。

私だって柔道界ではまだまだ若造。チャンピオンになったからといって終わりはありません。「道」はどこまでも続きます。

自分が3連覇できたのは、弱くて期待されていなかったけれど、自分を諦めずにとにかく好きだと思うことを続けたからこそ。これからも、自分の柔道を求め続けるなかで得た経験を、後輩の育成に役立てていければと思っています。


のむら・ただひろ ◎ 1974年、奈良県出身。柔道家。アトランタ、シドニー、アテネオリンピックの男子柔道60kg級において金メダルを獲得し、3連覇を達成。その後、40歳という異例の若さで柔道七段に昇格した。2015年に現役引退してからは、後輩の育成に尽力する一方、コメンテーターとしても活躍。Nextend代表取締役。医学博士。

野村忠宏が「DOU部門」のアドバイザリーボードとして参加した「30 UNDER 30 JAPAN 2019」の受賞者は、8月23日に特設サイト上で発表。世界を変える30歳未満30人の日本人のインタビューを随時公開する。

昨年受賞者、「スーパーオーガニズム」でボーカルをつとめる野口オロノや、昨年7月にヤフーへの連結子会社化を発表した、レシビ動画「クラシル」を運営するdelyの代表取締役・堀江裕介に続くのは誰だ──

文=松崎美和子 写真=小田駿一

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30 UNDER 30 2019

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