精神科医も驚いた、DeNA x 産総研によるメンタルプログラム

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2年前、働き方改革が徐々に広まりつつあった頃、DeNAでも「健康経営」の面から何かサポートできないかと考えていました。

例えば、メンタル面に関しては、どこの企業もストレスチェックや、サポートが必要な人への産業医の面談といった取り組みは行われています。それを、個人で、主体的に心身のコンディションをより良くキープできたら……そんなサポートができないかと模索していました。

そんなときに見つけたのが、産業技術総合研究所(産総研)による「お遍路はメンタル面にポジティブに働く」という研究*1でした。

これは、4日間、毎日歩いた後に、血液検査やアンケートを使い、客観と主観の両方から、メンタルの変化の様子(セロトニンやコルチゾール値などの変化)を見ていくというもの。結果は、驚くべきことに、身も心も疲労度は少なく、興奮もおさまり、免疫力もアップしていたのでした。

歩くことは、筋肉や骨への刺激、血流促進などといった効果により健康に良いと知られていますが、メンタル面にも効果があるということを知り、驚きました。それと同時に、歩くことの価値をもっと働く人たちに伝えていきたいと決意を新たにしました。

厚生労働省が行った平成29年労働安全衛生調査(実態調査)によると、メンタル面、とくにストレスに関しては、半数以上の人(58.9%)が仕事や職業生活に関することでストレスを抱えているという結果が出ています。それを「歩く」という運動で少しでも緩和できるのは、とても素晴らしいことです。

産総研xDeNAで共同研究

健康経営の観点から、さっそく産総研に、お遍路研究による成果を働く人にも応用できないかと相談したところ、先方にも関心を持ってもらい、一緒に取り組みを始めることになりました。

この取組みにはメンタル面のプロとして、「悩みの9割は歩けば消える」の著者である川野泰周先生(精神科医/ 住職)にも協力をいただきました。歩くことによって、働く人のメンタルをサポートができないかを研究したいと相談しところ、賛同いただけたのです。

取組みを始めるために、社内で声をかけたところ、関心を持ってくれたメンバーが何人か集まりました。とはいえ、メンタルというのは、とてもセンシティブな領域なために、慎重な進行も求められます。産業医への相談はもちろんのこと、倫理審査委員会を通す手続きなどを行っているうちに時間が経過していきました。

いままで腰痛や腸内環境などの取組みにおいても、医師や研究者とプログラムをつくってきましたが、今回ほど時間をかけたのは初めてでした。ただ、時間をかけたせいか、プログラムで使うコンテンツの録音を自前で行うなど、オリジナリティ溢れるものをつくり込むことができたのは、幸いでした。
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文=平井孝幸

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