「社会とは同化できない自分」に向き合うアーティストであれ| 北川フラム #30UNDER30

アートディレクター 北川フラム

今年で2回目の開催となる、30歳未満の次世代を担うイノベーターを選出する企画「Forbes JAPAN 30 UNDER 30」。

今年は、昨年度の5部門から10部門に増やし、幅広い領域で活躍する30歳未満を合計30人選出する。選出に際して、各部門の第一線で活躍するアドバイザリーボードを組成。各界のフロントランナーたちに選出審査を依頼し、その結果をもとに編集部で協議を行った。



今回、アート部門のアドバイザーに、地域活性化につながるアートプロジェクトの第一人者北川フラムが就任。「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」や「瀬戸内国際芸術祭」など、過疎化が進む地域と美術を融合させた取り組みは、美術界のみならず経済界からも注目を集めてきた。2016年にはアートディレクターとして長年の功績が認められ、学術や芸術、スポーツ分野の功労者に授与される紫綬褒章を受章した。

「アーティストは極めて優秀な技術者だ」。そう断言する北川。若いころは美術にまったく関心がなかったという彼は、なぜ、「アート界の裏方」を目指したのか。アート部門アドバイザーとして選考を行ってくれた北川を変えた芸術作品との出合い、現在の美術界における“地殻変動”、そして後進へのメッセージを聞いた。

アーティストの無残な末路を知り、20代で裏方をやると決めた

20代のいいところは、恐れを知らないことです。

ぼくが20歳のころはまさに、学生運動が盛んな時代でした。高校卒業後に上京して学生運動や社会運動に参加しましたが、恐れなどなかった。とにかく、自分が嫌だと思うことに対して正面からぶつかっていく感じ。未来は描けませんでした。

いまでこそ美術関連の仕事に就いていますが、昔は美術なんてまったく興味がありませんでした。高校1年のときの美術の成績は、5段階の2。故郷に呼ばれて話をするとき、旧友が「北川さんは昔から絵が上手で……」なんて紹介するけど、嘘ばっかりって思うね。

一方で、ぼくたちは戦後民主主義の申し子だから、無意識のうちに「社会を良くしなくてはいけない」とか、いろいろ思うところがあったんですよ。何が「良い」かは別としても、世の中に不合理なことがあってはならないと思っていた。

そんな私が美術の分野へと踏み出すターニングポイントを迎えたのは、21歳のときでした。
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文=瀬戸久美子 写真=小田駿一

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30 UNDER 30 2019

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