映画は怒りと感動で撮る。NY在住ドキュメンタリー監督の「パッション」

映画監督 佐々木芽生

つつましい給料で作品を買い集め、世界屈指のアートコレクターとなった夫妻を描いた映画『ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人』は2008年に公開されると、ハンプトン国際映画祭最優秀ドキュメンタリー作品賞・観客賞を受賞するなど、世界各国の映画祭で高い評価を受けた。
初監督作品でこの傑作を撮ったのが、ニューヨーク在住のドキュメンタリー監督佐々木芽生だ。
「自分が映画監督と呼ばれるなんて、最初は何かの間違いじゃないかと思った」と笑う佐々木は、初監督作品の後も『ハーブ&ドロシー2 ふたりからの贈りもの』、捕鯨問題をテーマにした『おクジラさま〜ふたつの正義の物語』と自身の心を揺さぶる対象を長編映画におさめている。

そんな彼女がドキュメンタリーを撮るようになったきっかけは25歳で放浪したインドにあった。自らの力で道を切り拓く女性たち「SELF MADE WOMEN100」を紹介する連載企画。7月25日発売のForbes JAPAN9月号でも特集するこの企画で、今回は佐々木芽生に話を聞いた。


──子どもの頃から、映画監督になりたいと思われていたんですか?

いえ、そんな気持ちはまったくありませんでした。暗闇が苦手で、映画館が好きじゃなかったくらいです(笑)。
手探りで制作した1作目が、幸運なことにさまざまな国際映画祭で賞をいただいて、そこから「監督」と呼ばれるようになってしまった。それだけですね。

──監督作品を撮られる前は、ニューヨークでNHKのドキュメンタリー番組などを制作されていました。世界で起こっていることを伝えたい、という思いは当初からあったのでしょうか?

海外への興味は学生の頃から持っていましたがジャーナリストとしての原体験は、25歳の時のインド放浪にあるかもしれません。
私は大学を卒業してから、日本の映画配給会社で働いていたんですけど、忙しすぎて体調を崩してしまい、数年で辞めてインドに旅行に行ったんです。特に目的があったわけではなく、本当にふらっと。
その時に撮った写真を見返すと、私の心境、視点によって写真がどんどん変わっていくのが手に取るようにわかったんです。記録することのおもしろさに目覚めたのがこのときです。
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構成=崎谷実穂 イラスト=Willa Gebbie

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