大企業=エリートではない。3児の母が「空飛ぶ車」に挑む理由

NFT共同創設者兼CEO カプリンスキー真紀


目指すのは、人々の暮らしの質の向上です。移動時間を短縮できればその分、家族との時間を増やしたり、本当にやりたいことを手がけたりできる。空飛ぶクルマが一般化したら、私たちの生活は改善されるに違いない。3年ほど前から、夫とそんなことを話し合っていました。

この分野には他社も参入していますが、彼らが主に手がけるのは航空機のイメージに近いものです。巨大で走行機能がないため、空港やヘリポート間の移動のみなどに用途が限定されてしまいます。NFTが開発を進める「ASKA」は、より乗用車のイメージに近い製品です。SUVほどの大きさで、普通車のように一般道を走り、垂直に離着陸でき、空では翼を広げて自動飛行します。ドア・トゥ・ドアの移動を支える、まさに自動車と飛行機が一体化したものです。

ソフトウェアにも強みがあります。自動飛行の機能を備え、スマートフォンの地図アプリと連動させることで離陸場所に案内することも可能です。2020年にハーフサイズのデモ機を完成させ、飛行実験を実施する予定です。2025年にはディベロッパーと提携し、実用機を製造・販売したいと考えています。実勢価格は20万ドル(約2100万円)程度を見込んでいます。

──常に新たな分野を切り拓き、結果が出るまでやり抜く。真紀さんのモチベーションの源泉は何ですか。

2つあります。1つは、今の世界が抱える課題に対して、解決策をゼロから生み出したいとの思いです。それによって人々が喜んでくれる姿を想像すると、とてもわくわくします。IQPがいい例ですが、最初は理解してもらえなくても、実際に開発した製品を使った方々から、「いい製品だね」「うちでも使っている」といった言葉をもらう瞬間は、本当に嬉しいです。

試練だらけですよ。開発で躓くことなんて日常茶飯事です。でも、失敗してしまったとは考えない。「ああ、今日も、『こうしたらダメだ』ということを学べた」と捉えます。何を学び、次にどう生かすか。どうすれば前進できるだろうかと、発想を切り替えるのは得意だと思います。

やる気の源泉の2つ目は、幼い頃に2人の家族を失ったことです。3歳のとき、父をがんで亡くしました。当時、父はまだ29歳でした。その2年後、今度は2つ下の妹が他界しました。私の目の前で、交通事故に遭ったのです。

2人の分も生きたい。限りある人生、意味のあることを成し遂げたい。だから決して、諦めてはいけない。この思いが私の原点であり、エネルギーの源泉になっています。

先週、8歳になる下の娘が言いました。「ママ、私ね、大きくなったら会社を作るの。会社の名前は“NGU”にする」。「どういう意味なの?」と尋ねたら、「ネバー・ギブ・アップ!」。どんなときも、家族で苦労や成功の喜びを共有してきたからこその言葉だと思うと、とても嬉しくなりました。

3人の子どもたちには、何事にも全力で取り組んでほしい。それは自分自身にも言えることです。人生は短い。だからこそ、常にベストを尽くしたいのです。

さらに詳しい記事は7月25日発売「セルフメイドウーマン」特集号にて掲載。


カプリンスキー真紀◎シリアルアントレプレナー。高校卒業後、イギリスにて学士号、イスラエルにて修士号を取得。イスラエルで就職したのち、2001年にコンサルティング会社WBOを創業。11年には、コードの知識がなくてもアプリを自由に作れるシステムを開発するスタートアップ、IQP 社を日本で創業。米GE Digitalに売却した後、現在はNFTのCEOとして、米シリコンバレーで空飛ぶクルマの開発を手がける

構成=瀬戸久美子 イラストレーション=Luke Waller

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