GM傘下の自動運転「クルーズ」が商用化を延期、来年に期待

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米自動車最大手、ゼネラル・モーターズ(GM)傘下の自動運転企業「クルーズ」が自動運転タクシー事業の年内開始を断念した。しかし、クルーズはサンフランシスコでのEV(電気自動車)を活用したロボットカーのテストに、今後も注力する意志を明確にしている。

この動きは「クルーズがハイレベルの安全基準を満たし、世間からの信頼を獲得しつつ、自動運転技術の商用化を進めていく意志を示すものだ」と、クルーズのダン・アマンCEOは述べた。

GMのメアリー・バーラCEOは2017年末に、クルーズが一定規模の公道テストを2019年内に開始すると述べていた。しかし、クルーズもGMもこのところ新たな動きを伝えていなかった。

クルーズのアマンCEOはフォーブスの取材に次のように述べた。「この分野では新たな技術をいかに安全に投入するかの競争が起きている。しかし、同時に世間からの信頼を獲得することが重要だ」

アマンは、クルーズのサービスの明確な立ち上げ日についての回答は避けた。

「自動運転分野においては、安全基準に沿う技術を一刻も早く投入することが課題となっている。当社は本年度にテストを重ね、完全な自動運転の実現に近づいていきたい」とアマンは話した。

クルーズの計画変更は、自動運転技術の抱える複雑性や、それを日常のオペレーションに用いることへの課題の認識が広まる中で行われた。このテクノロジーの広範囲な実現に向けては、自動運転車の認識能力を高めるだけではなく、世間からの信頼を勝ち取る必要がある。

昨年はウーバーのテスト車両がアリゾナ州で死亡事故を起こし、テスラのユーザーが自動運転に過度な信頼を抱いた結果、死亡事故につながったケースも発生した。

アルファベットの自動運転部門のウェイモは、有料の公道試験プロジェクトを2018年からアリゾナ州で進めているが、同社が運行中のパシフィックミニバンを活用したサービスは、人間のセーフティードライバーが同乗した形での運用となっている。

また、リフトや自動運転システムを提供するAptivもラスベガスで5万件以上の乗車を提供したが、人間のセーフティードライバーを同乗させている。

モルガン・スタンレー出身で現在はクルーズでCEOを務めるアマンは、2010年にGMに参加し、同社のプレジデント務めた後、2016年にクルーズを企業価値10億ドルで買収した。その後、クルーズのCEO職を引き継いだアマンはホンダやソフトバンクから、数十億ドルの投資を取りつけ、企業価値を190億ドルにまで高めた。ただし、アマンは今後のIPO計画については回答を避けた。

クルーズは同社が現在、サンフランシスコで実施中の180台のシボレー・ボルトをベースとした自動運転車のテストの拡大についての明確な拡大プランを描けていないという。

一方で、クルーズはサンフランシスコ地域で急速充電施設の整備を進めており、その規模は米国で最大のレベルとなっている。

クルーズの車両は年内の商用サービスの開始は見送ったものの、現地では頻繁に目撃されている。同社の社員数は現在1500人に達し、行政に働きかけながらCalifornia Academy of Sciencesなどでのイベントも開催している。

「交通テクノロジーの未来を握るのは現地のコミュニティだ。現地の人々のつながりの中で、この新たな技術の導入を進めていきたい」とアマンは話した。

編集=上田裕資

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