ビジネス

2019.07.26

キャリアは迷走しても良い。根っことなる骨太な思考を|望月優大 #30UNDER30

コモンセンス代表取締役 望月優大


今は二本柱で事業を展開しています。一つは非営利団体などへの支援の仕事。主に広報や情報発信の領域が多いのですが、団体のコンセプトやビジョン、ミッションを言葉にしたり、少し変わったところではおすすめの本をアドバイスすることもあります。定期的に質の高い本を読むことで、話せる言葉の深さも違ってくるので。

もう一つは、社会的なテーマに関する取材や執筆などの仕事です。今年3月には、著書『ふたつの日本「移民国家」の建前と現実』(講談社現代新書)を出版しました。

これまでの仕事で築いてきたNPOの方々との繋がりが今にいきています。そのひとつが、難民支援協会です。彼らの情報発信プロジェクトとして立ち上げられたウェブマガジン「ニッポン複雑紀行」の運営に編集長という形で関わらせていただいています。

コンセプトは、日本にいる移民の方たち一人一人の人生にフォーカスを当てること。移民と一口にいっても、それぞれの方によってルーツも、日本で暮らしてきた年数も、家族がいるかどうか、どんな仕事をしているか、全て違います。

記事では過去の話や思い出などについて語っていただくことが多く、また写真も撮らせていただくので、取材のときにできるだけ誠実に振る舞うのはもちろんのこと、記事によって悪いスティグマ(烙印)がつくことのないよう慎重に編集しています。



長く走り続けるために骨太な思考を

社会問題を捉えるときには、ミクロの視点とマクロの視点を行き来することがすごく大事だと思っています。例えば「ニッポン複雑紀行」では移民の方一人一人の人生にフォーカスを当てていますが、同時に記事を100本読んだとしても見えてこない全体像もあると思います。だからこそ、俯瞰する視点の大切さを示すために著書も書きました。

社会問題に対して、目の前で起きている出来事をきっかけに「なんとかしたい」という思いの強さで関わっていく人も多いと思います。それもすごく大事なのですが、感情だけではなく知識を持つことも大切です。感情はいろんなことで揺れ動き、変わってしまう危うさがある。

特に、若い頃は熱量も多いですが、数年経っても現実が想像していたように変わっていなくて、モチベーションが続かないこともあり得ます。長距離走を走り続けるには、思いの強さだけでなく客観的に社会を捉え、問題について立体的に思い描けるようになる必要があると考えています。

もう一つの軸として知的な関心を持つこと。興味のある社会問題に関する歴史や制度をきちんと学ぶことにも時間を使ってほしい。地味ですし、つい疎かになってしまいがちですが、基礎としてとても大事なことです。体系的に学び、考えることで自分の関心が揺るぎないものになるし、自分の頭で考えられるようになります。これからソーシャルな領域でキャリアを築いていきたいと考えている若い方たちには、持続的な活動の根っことなる骨太な知識と思考を身に付けることをおすすめしたいです。


もちづき・ひろき◎1985年生まれ。埼玉県出身。日本の移民文化・移民事情を伝えるウェブマガジン「ニッポン複雑紀行」編集長。国内外で移民・難民問題を中心に様々な社会問題を取材し、「現代ビジネス」や「Newsweek」などの雑誌やウェブ媒体に寄稿。著書に『ふたつの日本「移民国家」の建前と現実』(講談社現代新書)。代表を務める株式会社コモンセンスでは非営利団体等への支援にも携わっている。


望月優大が「ソーシャル部門」のアドバイザリーボードとして参加した「30 UNDER 30 JAPAN 2019」の受賞者は、8月23日に特設サイト上で発表。世界を変える30歳未満30人の日本人のインタビューを随時公開する。
昨年受賞者、「スーパーオーガニズム」でボーカルをつとめる野口オロノや、昨年7月にヤフーへの連結子会社化を発表した、レシビ動画「クラシル」を運営するdelyの代表取締役・堀江裕介に続くのは誰だ──。

文=松尾友喜 写真=小田駿一

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