悔しさで磨かれた品質
2016年、「International Cider Challenge」にA-FACTORYで造ったシードルを初めて出品した。当時、中嶋さんには賞を獲る自信があったという。シードルを購入してくれる人も増え、「このシードルのファンです」と言ってくれるリピーターもいたからだ。しかし、その年の品評会では一つも賞が取れなかった。1度目の出品から、毎回ベストなシードルを品評会に出品するも、結果は最高で銀賞だった。
「そこからは意地になりました。そうすると徐々に品質の向上にも繋がっていきました」(中嶋)
悔しい思いが続いたが使用する酵母を変え、菌の管理をさらに徹底。何度もブレンド割合の調整も重ね、より良いバランスになるように仕上げた。
初めての出品から3年後の今年5月、「品評会で金賞を獲った」と事務所に連絡が入ると、スタッフ全員で万歳三唱をした。
当初はA-FACTORYでしか売られていなかったシードルも、徐々に首都圏の百貨店にも置かれるようになった。中嶋さんら造り手は、首都圏の駅に足を運び、金賞を獲った今も試飲販売をしている。試飲販売中は、青森県出身者が足を止めて応援してくれたり、「美味しい」と言ってくれたりすることが喜びだ。
2018年度の出荷本数は、約13万本。アオモリシードルは海外の観光客にも好評だ。シードル以外にも他のフルーツを使用したお酒や、アップルブランデーが醸造されている。
A-FACTORY店運営グループ工房長 中嶋孝博さん
実際に筆者もスタンダードを飲んでみた。口に運んだ瞬間、リンゴのさっぱりした香りと、軽やかな味が口に広がった。見た目はシャンパンのようだが、えぐみは無くとても飲みやすい。
時期や年度によってリンゴ自体に良し悪しがでてしまうため、ブレンドの微調整が要されることもある「アオモリシードル」。県産リンゴを使ったお酒を美味しく飲んでもらうため、こだわりは抜かりない。
A-FACTORYでは、青森に住んでいる人にも、青森県産商品の新たな魅力を提案するよう心がけている。A-FACTORY内のシードル工房に併設しているフードマルシェでは、訪れた人に宝物探しをするような感覚でお土産品などを購入してもらえるよう工夫もこらし、青森エリアにおける更なる地域密着経営を目指す。