キャリア・教育

2019.07.26 07:30

6歳の少女の優しさが原動力。大学生が目指した「児童買春がない社会」


2人としばらく遊んで帰る時間になったとき、妹がオレンジ色の布を持ってきてくれました。「久しぶりに遊んでもらってすごく楽しかったから、お礼にこれをあげる」と渡してくれたんです。

一瞬、言葉が出ませんでした。大人からひどい仕打ちをされ、両親にまで裏切られ、世界のすべてを恨んでいてもおかしくないのに、ただ半日一緒にいただけの外国人の私に こんなに優しくしてくれるなんて……。

私は保護施設でつらい話をたくさん聞くことになるだろう、と覚悟していました。でも、優しくされるなんて思ってもみなかった。施設を出た後、涙がぼろぼろ出て止まりませんでした。

カンボジアの警察官を変える

──カンボジアではその後、どんな活動をされたのでしょうか。

カンボジアでは、職業訓練と雇用です。児童買春の原因となる貧困を減らそうと考えました。最貧困層の人たちが住む農村の女性に職業訓練を受けてもらい、雇用する。具体的には、イグサを使った雑貨を作って販売しています。

一方で、加害者逮捕の促進にも取り組みました。警察官の意識と能力を上げるトレーニングをして、児童買春を適切に取り締まるようにしてもらいました。もともと警察支援に注力していた国際機関の協力もあり、子どもを買う人の摘発数が年々伸びていきました。

また、カンボジアは毎年7%ずつ堅調に経済成長し、貧困層の子どもの数も少なくなりました。このような複合的な要因から、被害児童数は大幅に減少しました。性的目的での人身売買の解決を目指すNGO「International Justice Mission」によると、2000年前後には売春宿に従事している人のうち18歳未満の子どもは30%でしたが、2015年の調査ではそれが2.2%まで減少したそうです。

私たちの現場調査や被害者保護をしているシェルターへのヒアリングでも、被害者はほぼいなくなっていました。そのため、2018年3月にかものはしプロジェクトとしてのカンボジアでの活動は終了しました。今は、ものづくりを通じて自立的に生きる女性を育てる NPO法人「SALASUSU」として事業部が独立しています。
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構成=崎谷実穂 イラスト=Willa Gebbie

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