職場の関係強化に有効 意見を上手に戦わせる方法

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1つ目は、著名人がこうした振る舞いを多くの場面で実践していること。私はこれらをまとめて「怒りの工業団地」と呼んでいる。人はリーダーの振る舞いをまねる傾向がある。このケースでは、私たちがリーダーをまねて、明らかに破壊的な結果を生んでいる。

一方で、認知されないことが多いのは、こういった類いのリーダーシップの需要を、私たち自身が高めている点だ。痛烈なパンチを繰り出す人物がテレビを独占するのは、私たちがこうした人たちに時間と関心を注いでいるからだ。これは本当に悪しき習慣で、怒りの工業団地の声を消して、この習慣を断たなければならない。

筆者 私たちの社会はなぜ、これほどまでに人の話を聞くことができなくなってしまったのでしょう?

ブルックス 私たちが聞くことを非常に苦手としている理由は、近年発達した軽蔑の文化にある。私たちは自分と反対の立場の人を、間違った意見を持った人(説得のしがいがある人)として見るのではなく、価値がなく、考慮するに値しない存在として認識することが多い。

こうした態度では、反対意見を聞こうとは思えない。そのため、他者に対する軽蔑の気持ちにより、私たちは相手の話を聞く習慣がなくなってしまった。

こうした現状を考えると、私たちが人の話を聞く能力を回復するためには、同胞である相手に(たとえ相手の考え方が軽蔑に値するとしても)人としての価値がないとする考え方を拒絶しなければならない。

筆者 古いアフリカのことわざ「When elephants fight, it’s the grass that suffers(象が戦うとき、被害を受けるのは草だ)」を紹介されていますが、政界で軽蔑がまん延することで、職場にはどのような影響が出ますか?

ブルックス 最も大きな声を持つ人々が軽蔑の文化を扇動すると、それは生活のあらゆる部分へと広がる。自分たちが正しく、他人がばかで悪者だ、という考え方を聞くことが非常に多くなっているため、職場でさえも戦場にならざるを得ないかのように感じるかもしれない。職場でのやり取りが、良い商品を作ったり顧客へのサービス提供に注力したりする代わりに、政治にのみ込まれてしまった。

しかし、政治を全ての中心に置いてしまえば、信頼や協力関係、創造性の深刻な崩壊につながる。背景にある軽蔑の文化がこうした状況をもたらすことは明白だ。

筆者 ビジネスリーダーはどうすれば、従業員が意見の相違に対して生産的に対処することを支援できますか?

ブルックス ビジネスリーダーがまずできることは、意見の相違を奨励すること。

今の風潮では、衝突や意見の相違が感情、ひいては身体に害であると考えがちだが、もちろんそれは間違っている。競合するアイデアによって成果が改善し、レジリエンス(回復力)が培われ、思考が研さんされる。しかし、意見の相違は温かい心を持ち、共通の目標を見据えた上で、正しい方法で奨励されなければならない。リーダーは、こうしたタイプの意見の相違を奨励する役割を担うべきだ。

編集=遠藤宗生

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