英新首相は「短命」に終わる? それでも応援したい理由

英国の首相になったボリス・ジョンソン

英国では7月23日、ボリス・ジョンソンが与党・保守党の党首になるという長年の野心を実現した。そのジョンソンが今後、英国の首相としてどのような困難に直面することになるかは誰もが知っている。

英下院では、欧州連合(EU)からの「合意なき離脱」に反対する議員が過半だ。新たに発足するジョンソン政権には、何ができるのだろうか?

ジョンソンがまず行わなければならないのは、新政権の閣僚を選ぶことだ。すでに主要な閣僚候補と目されるうちの何人かは、離脱期限である10月31日までに必ず離脱を実現するというジョンソンの考えに同意できないとして、閣僚にはならないことを明言している。

これまでジョンソンは、合意なき離脱の方針を支持する者だけで組閣するとみられてきたが、実際には、党内のあらゆる意見を反映させたい意向とされている。党首選の決選投票で敗れたジェレミー・ハント外相が、主要閣僚に指名される可能性は高い。外相を続投させない理由は、恐らくないだろう。

離脱を主導できるか?

ジョンソンは繰り返し、10月末の期限までにEUからの離脱を実現することは可能だと明言してきた。そして、EUが大幅に妥協することはないとみられることから、すぐにも合意なき離脱への準備に真剣に取り組む必要があると強調してきた。

また、ジョンソンは首相を辞任したテリーザ・メイがEUとの間でまとめた北アイルランド(英領)とアイルランド(EU加盟国)の国境管理の厳格化を防ぐための「バックストップ(安全策)」を含めた離脱協定は受け入れないとしている。

だが、EUはバックストップを含まない離脱協定を受け入れる意思がないことを明らかにしている。いずれにしても、英国は合意なき離脱への道を進んでいるということになるだろう。ただ、EU内外のモノの行き来を管理するシステムはすでに存在していることから、EUはこの点について、慎重に対応する必要がある。

総選挙の実施は近い?

この問題に進展が見られないことは、恐らく総選挙の実施につながる。野党議員とEU残留派の保守党議員の多くは、合意なき離脱の阻止を目指すだろう。そして、内閣不信任案の裁決と、ジョンソン政権の打倒を狙うだろう。大げさな話ではない。ジョンソンが直面する課題の重大さを、過小評価してはならない。

下院の保守党の議席数は、閣外協力する北アイルランドの地域政党・民主統一党(DUP)の議席を含めても過半数をわずか4議席上回るに過ぎない(現時点では2議席に減少)。さらに、8月1日には下院の補欠選挙が行われ、与党はさらに議席を減らすとみられている。

その後の状況は、ジョンソンにとって一層厳しいものとなる。保守党議員による小さな「反乱」も、議会における新首相の敗北と、退陣につながる可能性がある。

ただ、英国が陥っているこの混乱を考えれば、筆者は新首相を応援したい。ボリス・ジョンソンには魅力と、運命を信じるところがあると思う。それは、この国が今まさに必要としているものだ。ただ、ジョンソンには同情もしている。彼のたくましい楽観主義をもってしても、難しいと思うような課題に向き合うことになるからだ。

編集=木内涼子

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