だが、そのスターバックスはすでに、ロンドン市民から飽きられてしまったのかもしれない。英紙メール・オン・サンデーは先ごろ、同社の英国事業は損失を出しており、市内の数十店舗を閉鎖したと報じた。
ロンドンでは過去1年半の間に、35店舗が閉鎖されている。その理由として同社は、「継続的な圧力」と「消費者を取り巻く状況の変化、高額の賃料、政治的な不透明性」を挙げている。
同社は今年4月、売上見通しの引き下げや株価の低迷を受け、それまでの計画より多い150店舗を閉鎖すると発表。ただ、その時点では、英国内の店舗には「影響は及ばない」と述べていた。
英国内の店舗数は2017年以降、50店ほどにまで増加した。一方で同社の英国事業は、昨年9月までの1年間に1720万ポンド(約23億1500万円)の損失を計上している。
同社のケビン・ジョンソン社長兼最高経営責任者(CEO)は4月、「需要に対する一定の逆風」は「一時的なもの」との見方を示すと同時に、それでもこのところの業績は「許容できるものではない」と語った。
これらの言葉は、米国市場に関するものだったかもしれない。だが、現在のロンドン市場を見ると、将来を見越した発言だったようにも思える。
ジョンソンCEOはその他、「私たちはますます急速に変化する顧客の好みやニーズに対応するために、より迅速に行動しなければならない」として、次のように述べた。
「この1年間において、私たちは事業を合理化するためのいくつかの行動を取ってきた。組織としてイノベーションのアジリティ(機敏性)を高めることに努め、成長を再加速させて長期的な株主価値を創造するための基盤であるわが社の基本的価値観を後押しするものに一層力を入れる努力をしてきた」
CEOのこの発言は、「スターバックスは肥大化して、顧客との結びつきを失った」と解釈することもできる。
「厳しい」英国市場
一方、ロンドンは現時点において、最も厳しい市場だと考えることができる。ビジネスレート(非居住用不動産に課される固定資産税)の大幅な引き上げやコストの上昇、消費者信頼感指数の低下と消費者行動の変化、目まぐるしく変わる不安定な政治情勢といった要因のためだ。
ただし、スターバックスについては、現在のロンドンのハイストリートの状況を反映しているのか、それとも同社が時代についてくことができなくなったのかという疑問点がある。
ロンドン市場でのビジネスが困難な一連の要因は全て、国内の数多くの小売チェーンに影響を及ぼす最悪の状況を招きかねない。スターバックスにとっても、これは重大な問題となる。英国は同社にとって、米国、中国、カナダ、日本、韓国に次いで6番目に大きな市場だ。
スターバックスの苦戦が続く背景にあるのは、同社自身が直面する困難と、英国のハイストリートに影響を及ぼしている要因の両方なのだろう。
同社は十分に迅速な対応を取ることができるだろうか?私たちは、ハイストリートで最もよく知られた名前の一つが、ゆっくりと姿を消していく様子を目の当たりにしているのかもしれない。