こうした課題を解決してくれるのが、シアトルに本拠を置くスタートアップ「Xnor.ai」だ。同社は、クラウドではなくエッジデバイス(現場に近い機器)上で簡単にAIモデルを動かすことを試みている。Xnor.aiは、2016年12月にAli FarhadiとMohammad Rastegariによって設立され、2017年のシードラウンドではMadrona Venturesから250万ドルを、2018年のシリーズAでは、同じくMadrona Venturesなどから総額1200万ドル(約13億円)を調達している。
Ali Farhadiは、2016年に物体検出アルゴリズム「YOLO」に関する共著論文を発表している。YOLO(You Look Only Once)は、画像やフレームの中から複数の物体を検出する手法で、リアルタイム物体検出で最も多く用いられている技術の1つだ。現在、Aliはコンピュータビジョンモデルをエッジデバイス上で実行するためのプラットフォームとしてXnor.aiを普及させようとしている。
ソフトウェアやハードウェアのベンダーは、Xnor.aiを用いることでプロダクトにコンピュータビジョンを簡単に搭載することが可能だ。Xnor.aiは、対象のプラットフォームに実装するSDKを提供しており、SDKをインストールすれば画像分類や物体検出、顔認識、画像分割などの機能をアプリケーションに瞬時に搭載することができる。
この技術により、アップルのFace IDのような機能を簡単に実装することができるのだ。
スマートホーム機器を手掛ける「Wzye」は、Xnor.aiを用いて製品のインテリジェンスを向上した。Xnor.ai のアルゴリズムはデバイス上で実行されるため、Wzyeのスマートカメラはインターネットに接続していなくても人物認識を行うことができ、クラウド費用を抑えられる。
SDKでAI機能を簡単に実現
Xnor.aiは最近、デスクトップやエッジデバイスの上で実行するアプリケーションにAI機能を実装するための新SDK「AI2GO」をリリースした。AI2GOプラットフォームは、Linux、Microsoft Windows、macOS、Raspberry Pi、Ambrellaに対応している。
開発者はSDKをインストール後、数行のコードを書くだけでAI機能を実装することができる。SDKの対応言語は、CとPythonとなっている。Xnor.aiは、AIモデルと推論エンジンを含むシングルモジュール「Bundle」も提供しており、開発者は数行のコードを書けばデバイス上でモデルを実行することができる。個々のBundleはスマートホームやリテール、自動車など特定の業界を対象としており、その業界向けにトレーニングし、最適化されたモデルが含まれる。