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拡大するアジア市場に対して、積極的にアプローチしているのも、ミラノサローネの変化である。既に会場でもかなり多くのアジア人プレスやバイヤーを見かけるが、それだけでなく2016年からは中国・上海にて「上海ミラノサローネ」を開催しているのだ。


2018年11月に開催された「上海ミラノサローネ」。100社以上のイタリアの家具ブランドが参加した。

「重要な市場である中国へとイタリア製品を本格的に導入するために、ミラノサローネを拡大させました。我々の目的はイタリアと中国という歴史ある二つの文化の繋がりを強化することです。中国市場は、イタリア家具の品質や独創性、創造力に対して高い関心がある。この市場との貿易を強化したいと考えている企業にとって、絶好のチャンスといえるでしょう」

華やかなイベントではあるが、あくまでもビジネスの場であるという姿勢を崩さない。だから新たなチャレンジも厭わない。理想論だけではなく、実利を求める姿勢があるのは、クラウディオ・ルーティ自身が、イタリアのインテリア業界を代表するトップビジネスマンだからかもしれない。

もちろん、ミラノサローネの主役が、様々なデザインであることは変わりない。35歳未満のデザイナーだけが参加できる若きデザイナーの登竜門「サローネサテリテ」は、世界中のジャーナリストやインテリア関係者がダイヤモンドの原石を探しており(今を時めくnendoの佐藤オオキも、サローネサテリテに参加していた)、ブランド展示とは違った熱気がある。ここから始まる偶然の出会いは、WEBでは享受できない。事件は現場で起こっているのだ。




「サローネサテリテ2019」は“食” がテーマ。約550人の出展者の中からアワードを決め、今年は日本の「KULI-KULI」が1位を獲得。 プロジェクトの「KOBE LEATHER」は、牛肉の名産地である神戸では通常は廃棄されてしまう肉牛の皮革を、プロダクトへと生まれ変わらせるリサイクルを提案した。

「毎日会場に押し寄せる数千人の波を見ていると、ミラノサローネが単なる見本市ではなく、世界中のクリエイターやジャーナリストが“体験”と“感動”を求めて世界中から集まっていることがわかります。この魅力こそがミラノサローネであり、ひいてはイタリアの大きな資源となるのです」

もはやミラノサローネは、新作家具の展示会ではない。ビジネスの種をまき、体験を与える場所なのだ。


クラウディオ・ルーティ◎1946年、ミラノ生まれ。ファッション業界でキャリアを積み、インテリア業界へと転身。人気ブランド「カルテル」のオーナー兼CEOに就任。フィリップ・スタルクらトップデザイナーを起用することで話題となり、人気を不動とする。現在はミラノサローネの代表も務めている。

edit & text by Tetsuo Shinoda

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