川村雄介の飛耳長目

夜霧にかすむ黄浦区、外灘の光景は時代を超えたエキゾチシズムを感じさせる。横光利一の『上海』を思う。視界が悪いお陰で、鉄の塊のような味気無い高層ビルが背後に隠れ、欧米租界時代の石造りの建物が浮かび上がっている。おりから開催された日中資本市場フォーラムの中国側主催の晩餐会場からの眺めだった。

このフォーラムは、昨年秋に賑々しく行われた日中第三国市場協力フォーラムのフォローアップとして開かれた。中国側が熱心だった。日本側としても、尖閣問題以来、警報を解除してはいないが、中国が重要なパートナーになってくれればこれに越したことはない。会場には、両国の金融行政のトップと証券界のリーダーたちが居流れていた。

昨今の中国経済はある種の危機に見舞われている。とくに対米関係が深刻であることは周知のとおり。貿易不均衡もさることながら、外国技術の剽窃への風圧が高まっている。それゆえ、習近平国家主席が唱道する「中国製造2025」に対する先進国の警戒心は半端ではない。

こうした中で、中国は独自の先端技術開発に全力を挙げている。その裏打ちとなる、資本市場における資金調達面でも様々な工夫を凝らしている。

そもそも中国の資本市場は、1990年、約1世紀ぶりとなる上海証券取引所の再開をきっかけに発展してきた。香港と深センを合わせた中国の証券取引所の規模は、日本を上回るまでになった。

成長企業に関する新興市場も多彩である。10年前に開設された深セン証券取引所の創業板が有名だが、店頭市場の発展型である新三板も拡大している。「板」とは株式市場を意味する。一板は、大手企業や伝統的中堅企業の取引を行う市場、東京証券取引所の一部、二部に相当する。二板が上場新興企業市場である。東証マザーズのイメージだ。三板が店頭市場を指すが、従前は、一板で上場廃止になった銘柄の証券会社店頭による取引であった。

三板はベンチャー企業などの資金調達としては使い勝手が悪い。そこで、新三板が誕生することになった。新三板は、科学技術部、証券監督管理委員会(CSRC)、証券業協会、深セン証券取引所、北京市中関村管理委員会によって設立された、全国規模の証券取引プラットフォームである。CSRCの監督下で、全国中小企業株式譲渡システムによって運営・管理が行われている。登録社数は1万1000社を超え、時価総額は約70兆円に上る。

文=川村雄介

VOL.27

官民で進むフランスの成長戦略

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