ビジネス

2019.07.24 07:00

「天才・逸材採用」から1年──ZOZO研究所が見据えるファッションテックの未来


刺激になる、ファストリのテック投資

──今後、ZOZO研究所をどのようにしていきたいと考えていますか?

金山:“ファッションEC”領域において、今後さまざまなテクノロジーが登場し、社会を変えていくでしょう。具体的なものを挙げれば、ショッピングの文脈ではAIやVR/AR、物流の文脈では自動運転やドローン配送がそうです。新しい技術のシーズが芽生え始めたときに、一定の研究が進んでいて、成功確率が高い状態をつくっておく。

今後ゲームチェンジャーとなるような技術は必ず出てきます。その時に見過ごしていたりそれから対応していては遅いので、研究を重ねていつゲームチェンジが起きても対応できるようにしたいですね。

いま、日本で一番大きな規模のアパレル会社「ファーストリテイリング」がテックへの投資を推し進めている。ファッションテックの潮目が変わってきている感覚があります。



業界のリーディングカンパニーがグーグルと提携したり、自社ですごい物流センターを開発したり、すごい素材を開発したり。テクノロジードリブンで、さまざまなことに取り組んでいることは勇気がもらえますし、我々がやろうとしていることは間違っていないんだな、と思います。

とはいえ、まだまだ技術によって効率化できる部分もありますし、産業構造を変えられる余地もある。チャレンジャーの数が他の分野に比べたら、まだ少ないので、僕たちが牽引していける存在になれたらいいですね。

松谷:いま、ZOZO研究所で取り組んでいる研究はそれぞれトピックは変われど、新しいユーザー体験を提供したり、効果的なレコメンドや検索システムを提案していくことにつながっています。すでに事業実装に移っているものもありますが、その中でみえてきた難しさもある。システムを通してユーザーを理解し、より良い価値を届けられるよう、効果的に研究開発をしていきたい、と思っています。

鎮痛剤としてのAIから、ビタミンとしてのAIへ

──数ある技術の中で、金山さんが最も注目しているのは何ですか?

金山:AIですね。AIや機械学習が人類史上、一番収穫の時期になってきている。現段階では物珍しく感じられるかもしれないですが、最終的にはインフラレベルまで落としこまれると思います。AIや機械学習のパワーはすでに毎日感じているわけで。例えばユーチューブの動画を見ていたら、自分の趣味趣向に近しい関連動画のピックアップには機械学習が使われている。インスタグラムのフィードも時系列ではなく、裏で機械学習が使われている。今後、すべてのサービスにおいてのインフラになるものだと思います。

昨年のGoogle I/OでCEOのサンダー・ピチャイが「AIの民主化」と宣言し、AIの取り組みを推し進めている。AIを民主化する、と言うと少し分かりづらいかもしれないですが、要は“みんなが使えるようになる”ということです。


Google I/Oに登壇するサンダー・ピチャイ(Photo by Justin Sullivan/Getty Images)

5年後は誰もがAIや機械学習を当たり前のように使っている。その先に何があるのか。僕は早くモデルのチューニングや、どういうモデルを使うかといったAIや機械学習の議論から脱したい。最早、使うのは当たり前。それを使っている前提のもと、お客様にどんな価値を提供すべきか。それを研究所内で議論すべきだと思います。

ブロードバンドシフトやモバイルシフトは目に見える形で、明らかに社会の行動が変わった。しかし、AIは目に見えないので静かに革命が進んでいく。きちんと取り組んでいかなければ、気づいたときに追いつけないほどの差が生じていると思う。そうならないように、いまのうちから注力して取り組んでいかないといけないですね。
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文=新國翔大 写真=小田駿一

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