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ボーム&メルシエCOO ダニエル・ブレラード

“現代的な良質時計”とは何だろうか?その問いの明確な答えが、ボーム&メルシエ「クリフトン ボーマティック」である。ユーザビリティを高めるために4つのエレメントを進化させ、現代的なライフスタイルに合わせた時計は、いかにして生まれたのか?そのキーマンであるボーム&メルシエCOO、ダニエル・ブレラードに話を聞いた。


機械式時計の進化は、常に時計の誤差を与える“外敵”との戦いであった。水分、紫外線、衝撃、重力、温度など、あらゆるものが時計に誤差を与えてくる。そこに対処するために、天才時計師や科学者たちは、さまざまな構造や素材を開発してきた。では現代の機械式時計にとっての外敵とは何だろうか?

「私はさまざまな時計ブランドで時計の開発を担当し、2006年からはボーム&メルシエのインターナショナルカスタマーサービスを統率するようになりました。カスタマーサービスにはさまざまな時計が持ち込まれます。どこが故障しやすいのか?何が原因なのか?などを分析し、製造現場へとフィードバックすることで時計の品質を高めるのです。ところがあるときから、徐々に精度悪化のトラブルが増えていることに気が付きました。原因は“磁気”でした」



時計ムーブメントの心臓部であり、チクタクと時を刻む脱進機には、鉄系の素材が多く使われるため磁気を帯びやすい。デジタルツールを駆使して仕事をする現代のビジネスマンが、ついうっかりタブレットなどの上に時計を置いてしまうと、使用されている強力な磁石のせいで磁気帯びして、精度を悪化させるのだ。

「現代社会のライフスタイルに合わせた、新しい時計をつくることが求められたのです。ボーム&メルシエでは常に新しい技術の開発を進めていますが、さらにそのスピードを上げるために、ムーブメント会社のヴァルフルリエやリシュモンの開発チームとの協力体制をつくって、プロジェクトをスタートさせました(注:ボーム&メルシエはリシュモングループに属しており、ヴァルフルリエはリシュモングループ傘下のムーブメントメーカー)。それがおよそ6年前のことです。使い勝手を高めるために、ロングパワーリザーブや高精度、そしてメンテナンス期間を延ばすことも意識しましたが、最も重視したのは精度に直結する耐磁性能。日常生活中で、どのレベルの耐磁が必要なのかについてディスカッションを重ねました」


身に着けた新作モデルを外してまで、熱心に解説するダニエル・ブレラード。

その結果、デジタル機器に使用される磁石の磁気を余裕でクリアする1500ガウスの耐磁性能が指標となった。時計の耐磁性を高めるには、非磁性素材でムーブメントのパーツを製作するのがセオリー。そこでまずは脱進機周りにシリコン製パーツを用いたCal.BM12-1975Aを搭載する「クリフトン ボーマティック」を2018年にリリースする。


ケース径は40㎜で厚みは10.3㎜。均整のとれたプロポーションで、シャツの袖口にもすっとなじむサイズ。ビジネスウォッチとして適している。

しかしこのハイテク素材は扱いが難しいため、メンテナンスの際にはスイス本社に戻して作業しなければいけない。これでは効率がよくないので、その翌年には、テンワがシリコン、ひげぜんまいはクロムコアのインナーケースに収め、ヒゲ持ちはデュラセラムなど、さまざまな非磁性素材を適材適所で取り入れた進化版Cal.BM13-1975Aへとアップデートしている。これだけの短期間で新型ムーブメントをアップデートさせることは極めてまれなことだが、これはユーザビリティを意識しているからこその英断である。

このCal.BM13-1975Aは、2019年モデルから搭載するのだが、1500ガウスという耐磁性能、120時間というロングパワーリザーブ、COSC認定クロノメーターの高精度、そして最低でも5年周期というメンテナンス期間はそのまま維持している。


2019年の新作はカラーバリエーションを追加した「クリフトン ボーマティック COSC」。美しいブルーグラデーションのダイヤルは、発売前から大きな話題となっている。十字のラインが入っているのは、高精度COSC認定モデルの証。1500ガウスという耐磁性能、120時間というロングパワーリザーブ、COSC認定クロノメーターの高精度、そして5年周期のメンテナンス期間という優れたスペックをもつ。自動巻き、SSケース、ケース径40㎜。33万円(9月発売予定)


ケースサイドはヘアライン仕上げとポリッシュ仕上げを使い分けており、メリハリを利かせている。


搭載するのは、アップデートされたCal.BM13-1975A。

「高精度は品質にかかわる指標ですし、複数の時計を使い分ける現代なら、週末は時計を外しておいても月曜朝まで動き続けるロングパワーリザーブのユーザーメリットはとても大きい。脱進機の構造設計を変更したり、動力ゼンマイを大型化したり、テンワのサイズを最適化することで、120時間というロングパワーリザーブ化に成功しました。ムーブメントのサイズを大きくすることで、広がったスペースを上手に使って効率化を進めています」

優れたムーブメントをつくりたいなら、素材も構造も自由に開発ができる時代である。しかし何でもかんでも取り入れれば、必ず生産コストに跳ね返る。それでは意味がない。ボーム&メルシエはアフォーダブル(affordable)な時計を提供することも、大切なアイデンティティなのだ。

「我々は常に価格を意識して時計を開発します。そのために、技術の基礎レベルを高める一方で、新たな技術を開発して弱点を解消する。我々はこれを“標準化とイノベーション”と呼んでいます。現代のライフスタイルに合わせて、変えるべきところを適切に進化させることで、ユーザビリティに優れた時計をつくるのです」

ここまでユーザー目線の時計づくりを意識するのは、ダニエル・ブレラード自身が時計愛好家であるからかもしれない。


美しいドレスウォッチ「クリフトン」コレクションのデザインの源は、この1950年製モデルである。

「私のキャリアは建築業界から始まりましたが、いつも時計に惹かれていました。幼少期にブレラード家に伝わる懐中時計を継承したときから、チクタクと生命体のように動くムーブメントの魔術に魅了されてしまったのです。時計にはラグジュアリーさと審美性、そして技術のすべてが備わっている特別なモノです。だから一人では生み出せない。長い時間をかけてチームと一緒に開発した製品が世の中に出て、それが評価されたときほどうれしいことはありません」

開発のスタートから、時計の完成まで立ち会った「クリフトン ボーマティック COSC」の高評価は、何よりもうれしかったことだろう。ユーザビリティを高める高性能ムーブメントを搭載する美しい時計には、つくり手の情熱が詰まっている。だから惹かれてしまうのだ。



ダニエル・ブレラード
◎ボーム&メルシエCOO。スイス・ローザンヌ出身。建築業界を経て、1991年に時計業界へ。1999年にリシュモングループに入社し、ボーム&メルシエやモンブランなどの開発部門を担当。その後ボーム&メルシエのインダストリアルディレクターやインターナショナルカスタマーサービスを指揮。2013年から現職。商品の開発や流通、アフターサービスなどを統括している。

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