最後に、パイヴェットに、彼女を含むフィンエアーのディレクター(マネージャー層)について話を聞いた。フィンエアーのCEOを支えるチームのディレクター職は9人。そのうち4人は女性だ。
まず、女性のリーダーが必要な理由を問うと、意外な答えが返ってきた。
「私は、男性か女性ということより、ダイバーシティーが一番大事だと思います。考え方やバックグラウンドがみんな違う。組織で女性を雇わなければ、人口の半分ほどを無視することになります」
日本では、働き方改革が重大なトピックになっており、仕事量がなかなか変わらない中で、働く時間の削減を求められている。フィンエアーでは、この点について、どのように工夫をしているのだろうか。
まず、パイヴェットは「労働時間を減らすなら、マネージャーに責任があります」とはっきりと答えた。マネージャー層はみな、「ワークライフバランスのトレーニング」を受けるという。そして、こう続けた。
「以前に比べると、デジタルツールによってより柔軟に働けるようになりました。チームのメンバーが何をしているのか管理するのがマネージャーの役割。危機的な状況ではない限り、週末は一切連絡しないようにする。緊急の場合は、『いま対応できますか』と聞いて、難しければ別の方法で対応します。どんなビジネスでも残業しなくてはいけないケースがあると思いますが、効率性や生産性が下がらないように休ませなければ問題が起きます。お客様の体験を良くするためにはスタッフも大事にしなければいけません。スタッフをリスペクトすれば、お客様も大切にすることにつながり、より良い仕事ができると思います」
パイヴェット自身、子育てをしながらPRディレクターとして働き続ける選択をした。
「人生において家族の大切さを感じています。私は仕事が大好きで、子どもが生まれても専業主婦になる考えはなく、バランスが大事だと思いました。子どものデイケアという良い社会のシステムがあるからこそ、こんな働き方ができる。組織においても、女性がマネージャーになることで、大きく変化していくのでしょうね」
初夏の光を浴び、サングラス姿で笑うパイヴェット
パイヴェットは、私たちを迎えたディナー前の30分の予定だった取材時間を大幅に超え、ディナー中も丁寧に質問に答え続けてくれた。そのおおらかな雰囲気が魅力的だった。
撮影では「カメラを向けられると緊張する」と言って、最初は大きなサングラスをかけて笑っていた。レディー・ガガもファンだというヘルシンキ発のシューズブランド「ミナ・パリッカ」のうさ耳(うさぎの耳)付きのパンプスが、無邪気で眩しかった。
次回は、世界で注目されるヘルシンキの新しい図書館の話。読書のためだけではない、驚きの空間についてレポートする。