フィンエアーの従業員の56%は女性。もちろんフライトアテンダントが多いが、なかにはパイロットや技術者も含まれる。
「女性のパイロットは珍しいのですか?」
私が尋ねると、彼女は「なぜそんなふうに聞くの?」といった表情で「No……」と答え、「もっと多ければ良いのだけれど、女性のパイロットは35人ほどいて、これからも雇用を増やしたいと考えています」と続けた。その答えに少し驚いた。
女性の働き方について自身の経験を交えて話すパイヴェット
また機内で出会った「母親」のようなフライトアテンダントの話をすると、パイヴェットは「私たちはカスタマーサービス・エクスペリエンスと安全性について力を入れており、若い社員とともに経験のある社員、両方が1つのフライトに入るようにしています。経験がある人は、安心感があって良いですよね」と話し、笑顔を見せた。
フィンランドでは、産休や育休に当たる「母親休業」が産前30~50日から始まり105勤務日間あり、その後、母親だけでなく父親も取得できる「親休業」(158勤務日)と合わせて、約9カ月間の休みが取得できる。
フィンランド大使館によると、母親休業の最初の56日間は給与の90%、その後は70%が保障される。さらに休業期間終了後も、無給だが、親は雇用を維持したまま、子どもが3歳になるまで休むことができ、家庭で育児する権利を持っている。
さらに「チャイルドケア」として、政府から0~17歳未満を対象にした児童手当が、子どもの人数に応じて毎月約96~135ユーロ(約11000~16500円)支給される。フィンエアーでは、この社会保障制度に沿って、育休後に問題なく職場復帰できるようにサポートもしているという。
育休の取得方法は人それぞれ
パイヴェットは、「でも本当に家族によって違うんですよ。子育てについては、それぞれの家族が決めることです」と付け加えた。
では彼女の場合はどうなのか。
パイヴェット自身は、もともとノキアの広報担当だったが、2011年にフィンエアーに転職したキャリアの持ち主だ。3人の娘がおり、それぞれ産休と育休は1年間ずつ取得し、家で子育てに専念した。それから留意すべきは、充実した夫のサポートがあったことだ。
彼女が休業してから1年後に働き始めると、今度は夫が育児のため、4カ月間休んだのだ。
通常、フィンランドでは、男性は妻の出産前後に約9週間の休暇を取得することができる。フィンエアーでも、男性が9週間の育休を取るのは当たり前だという。
だが、パイヴェット家の場合、夫は出産後に2週間休み、それから約1年後にも、4カ月間休んだことになる。これはフィンランドでも珍しいほうだという。残念ながら、日本の職場環境では、一般的に子どもが1歳児になってから「育児のために4カ月休みたい」と申し出る勇気のある男性は少ないだろう。
パイヴェットは「育休後、職場に復帰した時、夫が家にいてくれたおかげで子どものことを心配することなく、仕事ができ、とっても楽だった」と振り返る。さらに思いがけない効果もあったという。