民間企業と市職員が合宿をして、市の課題解決に向けて協力する「MICHIKARA(ミチカラ)」や、自腹で借りた空き家でイベントを開催し、シャッター商店街の再活性化を目指す「nanoda」など、官民問わずに巻き込んでいく行動力で、ユニークな地域活性化策を次々に実現。「スーパー公務員」として注目を集めている。
市の予算に反映されるプレゼン
2015年4月に新設された、地方創生推進課シティプロモーション係(当時は企画課シティプロモーション係)で係長を務める山田。そこで、立ち上げたのが「MICHIKARA」だ。
民間企業の社員や市の職員が2泊3日の合宿で、市の抱える課題についての解決策を検討。最終日に塩尻市長に直接プレゼンする。ただの形式的なプレゼンではなく、内容が良ければ、実際に来年度予算案に反映されるという仕組みのものだ。2016年にスタートし、今年5回目の開催と、すっかり定着しつつある。
初回はリクルートやソフトバンクの社員を塩尻市に招き、市からはシティプロモーション係や企画課経営企画係が参加。3日間の合宿では、参加者たちが自らを追い込み、市長へのプレゼンの後に涙が溢れてしまった人もいるほど白熱したものとなった。
「職員の育成やモチベーションのアップに、目に見えてつながりました」と山田は成果を語る。
また、リクルートマーケティングパートナーズやソフトバンクと協働で「MICHIKARA」の学生インターシップ版も始めた。塩尻市という挑戦できる地域があることを学生に知ってもらい、優秀な人材を呼び込むためのブランディングにつなげる狙いだ。
民間と協働を成功させるためのカギは何なのか。山田が最も心を砕いているのは「わかりやすい仕様書作り」だ。山田が説明する。
「まず、『向き合うべきテーマ』『テーマの背景』『我々のビジョン』『過去にトライした事の進捗やその結果』などを踏まえながら、解決していただきたい課題を明確に伝えるように心がけています。我々がまず考え抜いて、考え抜いて仮説をつくる。そのうえで、『これは全国的な課題だが、まだどこも解決の糸口がない』と炙り出し、『いち早く塩尻市と一緒にやりませんか?』と伝えています」
30分間怒鳴られ気づいたこと
今でこそ市民や企業、アーティストなどとのさまざまな民間協働を実現し、「スーパー公務員」と呼ばれる山田だが、かつては「危なっかしい、評価の低い職員だった」と自身を振り返る。
そんな山田のターニングポイントになったのが、2009年に市民交流センター「えんぱーく」の開設準備室のメンバーになった時のことだ。当時、「えんぱーく」を広く知ってもらうために、地域でマルシェを開いていたが、山田は様々な市民団体に参加を呼びかけた。