同時に多品種栽培にも舵を切った。5月ははっさく、6月はあまなつ、7月は河内晩柑と月ごとに収穫期がばらけるように畑を再編成。労働力が高い若手農家の場合、収穫期が集中しても対応できる。
しかし高齢化して労働力が低下した農家にとっては、収穫期を分散させて作業量を平準化することが重要になる。土地生産性から労働生産性に切り替え、高齢農家でも十分に収益を上げられるモデルを確立した。
豊かな生態系が広がる高木農園
高木農園では気候に合った品種を植え、生態系を大切にする方法が無農薬栽培を可能にした。さらに、収穫を少し遅らせることで木にストレスをかけ、果実から余分な水分を落とし実を引き締める方法を採用している。
出荷時期を市場のニーズに合わせようと農薬を使って栽培すると、太ったブヨブヨの果実が多くなるという。柑橘の特性をすべて把握しているため、1つの畑には年に3度ほどしか出向かない。「柑橘も人間も、成長に必要なのは飢えと乾きだ」。無農薬で育てた味本位の栽培方法が、多くの消費者の心を捉えている。
これからの農業は気候に適した品種を採用し、生態系から学び、昔から大切にされてきた作り方を基本にすることが重要と説く。農薬をかけず、人手も手間も必要以上にかけない。「何事も実践してみないとわからない。常にハングリーであれ」と目を光らせる。テクノロジーに頼りすぎず、自分の頭をつかい、自分の手を動かし、考え抜くこと。これは日本の農業以外にもあてはまる、重要なメッセージである。