アマゾンが、いわゆる「出版流通業界再編成」に果たした役割、業界に与えた影響は、どんなものだったのだろう?
元大阪屋の古市氏はこう話す。
「2013年ごろからの一連の業界再編成は、アマゾン上陸とはもちろん無関係ではないと思います。でも、われわれは1996年くらいから、路面書店での販売には限界が来ているように感じていました。そして当時の状況としては、大阪屋が下した、アマゾンとの取引開始、新たな販売ルート確保の判断は正しかったと思います」
「再編成」の当事者であった筒井の見解はこうだ。
「出版業界の文化、体質にアマゾンが与えた大きな影響は、出版社が『本』という商品の製造元、すなわちメーカーとして、少なくとも、当時の出版VANを利用した『在庫管理』の必要性を認めたこと。そして、1冊の本ごとの書影、目次、紹介文書などの整備への意識を高めたこと、この2点だと思います。
アマゾンが書籍の『詳細ページ(書影とともに、書籍1冊のすべての情報と購入ボタンが表示されているページ)』に、発送までの時間を『24時間以内』『2〜3日』『7〜8日』などと表示して在庫情報が読者に見えるようにしたので、版元が在庫管理を意識するようになったのだと思います。書籍ごとの詳細情報も、それまでは書店が独自に作る『POP』や新聞・雑誌の『書評』に頼っていたんですよね。
3点目があるとすれば、書籍の価格や、初版部数の管理などにも、版元の意識がブラッシュアップされたことでしょうか」
(後編第10回〜順次公開予定)
◎筒井理枝=アマゾン ジャパン、アスクル、楽天などを経て現在GUCCI【公式】オンラインショップ担当。ICU卒。山梨県甲府市出身。多ジャンルの音楽ライブと落語、日本美術、禅と飲食に体力と時間を費やす日々を過ごす。