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2019.09.12 08:00

ローンチ当日に一番売れた本|アマゾン ジャパンができるまで 第9回


答えは、「インターネットをわかっている人」は、『わかるインターネット』を買わないからだ。そして、ローンチ直後にアマゾンに来るような客は、「わかっている人」だったのである。
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また、立ち上げ後、ローンチのメンバーたちが注視し、見比べていたある2つの「リスト」があった。「注文が入ったリスト」と「実際に発送したリスト」である。メンバーはその差異に注目した。「注文が入ったのに、なぜ発送されないのか?」、それはアマゾンに在庫がなかったからだ。ここに商機が潜んでいると考えられた。

そして筒井には、「倉庫に在庫がないから発送されない」を解決するために、サプライチェーンのチームとひたすら格闘し、大阪屋と議論をし尽くし、出版社と奮闘する日々が始まることになる。


2001年2月刊行「別冊週刊ダイヤモンド ビットビジネス 大特集 アマゾン ジャパン ウェブサイトから物流まで完全解剖」に掲載された、アマゾン ジャパンディストリビューションセンターの記事
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「フラグ」を立てないと、ランキングがピンク本だらけに!

実は、実際にローンチしてみて、思いがけなく判明した「売れ筋」商品があった。それは、重い本、とくに辞書である。たとえば『広辞苑』。

ちなみに、当時、岩波書店とアスキーは、仕入れ担当の筒井にとってはきわめて「面倒な」出版社だった。両社は、再販制度の越権行為であった「買い切り」を採用していたので、仕入れた本は必ず売り切らなければならなかったのである。だが、その岩波書店にも『広辞苑』のバカ売れはひどく喜ばれた。

また、地図や楽譜といった、物理書店では探しにくいようなものもよく売れた。他には、グラビア写真集、アイドル写真集、タレント本などの売れ行きもよかった。

また、意外に売れたのは文庫本だったという。インターネットで本を買うことに「トライしてみよう」という人たちには、安価な文庫がちょうどよかったのである。

そんな中、本当によく売れたのが、いわゆる「ピンク本」だった。「対面で買いにくい」その類の本が、店員と顔を合わせずにすむオンライン書店で売れるだろうとは予測していたものの、その傾向は実に顕著だった。

そしてこれを受けて、実行に移された方策がある。カタログデータベースには「売れているがランキングには出さない」という印、「ランキングフラグ」という機能をつけたのだ。そうでないと、サイト上のランキングが「ピンク本だらけ」になるからだ。

この後、次第に、「本屋で見たけれど買いそびれた」「広告で見て気になった」「書店に寄るのが面倒」系のデマンドの比率が増え、次第に路面店の売れ筋と合致していくが、それはローンチ後、1年も経ってからのことだったろうか。

「送料無料」のキャンペーンも始まった。それもあり「300円以下の本は仕入れるな」というシアトルからの指摘があった。安い本は売れば売るほど「損」をするからである。

筒井は、立ち上げ当時、290円足らずだったカフカ『変身』がよく売れたことを覚えている。また、書籍と雑誌の中間のような本だが、ISBNがついているためにアマゾンで売れる「ムック本」も安価であり、仕入れるとサプライチェーン担当からお目玉を食らった。


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文・構成=石井節子

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