定年後の健康寿命は有限だ 幸せになるための「老い支度」とは

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定年で名刺も居場所もなくなった時、人生を輝かせるためには新たに地域の居場所をつくり、社会とつながることが重要だと前回の記事で書いた。今回は定年後も輝く人生を送るために「定年」と「健康寿命」の関係について考えてみよう。

定年前の「ワークライフバランス」

ワークライフバランスは、少子化対策として若年世代を中心にした「仕事と子育ての両立」に主眼が置かれてきた。しかし、近年では定年前の中高年男性のワークライフバランスの実現が注目されている。その理由は、老親や配偶者の介護で年間に10万人ほどの介護離職が発生し、企業等で管理職を務める中高年男性も決して例外ではないからだ。

また、長寿になると死別や離別を経験する高齢者や生涯独身で過ごす人も多い。すでに男性の生涯未婚率(50歳時未婚率)は2割を超えた。今日では単身世帯が大幅に増え、ひとり社会を長く生きなければならない。平均寿命が長くなり、定年後に長い人生を暮らすためには地域の人間関係づくりに向けた定年前のワークライフバランスが重要なのだ。

『平成28年 社会生活基本調査』の65歳以上高齢者の生活時間をみると、1次活動(睡眠、食事など生理的に必要な活動)が11時間38分、2次活動(仕事、家事など社会生活を営む上で義務的な性格の強い活動)が4時間00分、3次活動(これら以外の各人が自由に使える時間における活動)が8時間22分となっている。

人生100年時代が来れば、高齢期の自由時間は10万時間以上にも達する。もはやわれわれの老後は「余生」ではない。しかし、特に男性の一生は定年退職で大きな不連続点を迎えるため地域へのソフトランディングは難しい。定年前の中高年男性のワークライフバランスは、定年後に地域や家庭に居場所をつくるためにきわめて重要なことなのである。

定年後の「健康寿命」

人はただ長生きするだけでなく、誰もが健康で長生きしたいと願っている。健康に過ごせる期間を「健康寿命」といい、2016年時点では男性72.14年、女性74.79年だ。同年の平均寿命は男性80.98年、女性87.14年で、健康寿命との差は男性で8.84年、女性で12.35年だ。それは何らかの「介護・看護が必要な期間」になり、長寿社会は長い要介護期間を伴っているのだ。
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文=土堤内昭雄

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