高宮:そうしたことを前提にした場合、若くして起業家としてのピークを持ってくる必要すらありません。「一生、起業家」というキャリアができたことで、どこで自分の起業家としてのピークを持ってくるかということを考えられる。最後に成功すればいいのであれば、長い時間軸で考えてもいいのではないかと思います。
とはいえ、起業家としてのピークは後ろでもいいのではと言いつつも、成功する起業家は「グリット力」があります。
「喧嘩は負けを認めるまで負けじゃない」という話はよくありますね。最近の多くの起業家にとって、成功の定義は、世の中一般論的な「金銭的、地位、名誉的な成功」ではなくなってきています。彼らの成功の定義は、1. 自分のパッションのある課題解決を実現する、2. 世の中を変える、 3. 事を成す──へと変化しています。こうした価値観の変化は、世の中の大きな流れともつながります。
英語で「アントレプレナー」というと、必ずしもスタートアップの経営者ではありません。新しいことに挑戦し、ことをなすことを意味しており、コロンブスだってアントレプレナーです(笑)。
大企業についても、オープンイノベーションを進めていく、イノベーションを起こすために「起業家的人材をどう受け入れるか」という仕組みや文化作りが議論されています。それは、社会全体がスタートアップ業界的になってきており、起業家的な動き方をしてイノベーションを起こすことが、大企業でも、政治でも官でも求められてきています。
スタートアップも、スタートアップの中にいる個人の動き方も、前述の大企業、政、官においても、社会のあらゆる局面でのスタートアップ的な動き、起業家的な動きが顕在化してきている「大社会曼荼羅」を描けるのではないかと思ってきています。一貫性のあるストーリーで「社会全体」が変わろうとしていることを感じます。
失敗をいかに「リカバリー」すべきか
──創業3年目以内のスタートアップがさらなる成長をするために重要なことはなんでしょうか。
SBIインベストメント 加藤:精神論になってしまいますが、スタートアップは、成功まで一直線で行くことはありません。常に失敗を経験しながら進んでいきます。失敗した時に、どのように問題や課題に立ち向かうか。例えば、起業した当初に持っていた仮説をしっかり検証できたのか。うまくいかなかった時に、どのようにリカバリーしていくのか。そうしたところで、負け続けないで成功するまでできるということが、重要なのではないかと思っています。
なぜかというと、IPOやM&Aをしたスタートアップでも、一直線で成功に向かってうまくいったかというと全然そうではありません。途中で資金が集まらない、事業モデルを再構築できない、人が離脱してしまうなど、そういう失敗が数多くあります。
だからこそ、私は経験上、リカバリーがうまくいった企業が結果うまくいっていると思っています。どうやって成功するか、というよりも、失敗からどう立ち直るかが大きな試金石になると思います。