米医療系管理職の団体「Medical Group Management Association(MGMA)」が、医師の報酬に関して新たに調査を実施。その分析結果から、「価値に基づいた」医療モデルへの移行により、プライマリ・ケアを担う一般内科医や小児科医、家庭医などが恩恵を得ていることがわかった。
また、医療相談会社であるメリット・ホーキンズ(Merritt Hawkins)も、7月上旬に発表した報告のなかで、プライマリ・ケアが重視されることで、プライマリ・ケア医の需要が増え、その給与が上昇し続けていると指摘している。
MGMAのプレジデント兼最高経営責任者(CEO)のハリー・フィッシャー=ライト医学博士(Dr. Halee Fischer-Wright)は、「プライマリ・ケアは、予防的治療の提供と慢性疾患の管理における要だ」と話す。「医療制度は次第に、質の高い治療を低料金で提供するうえで医師が果たす重要な役割を認め、それに対して報酬を提供するようになってきている」
分析によると、2018年におけるプライマリ・ケア医の報酬中央値は、前年度と比べて3.4%増の26万6500ドルだった。同時期に、専門医の報酬は4.4%上昇し、2017年の42万5136ドルから2018年には44万3881ドルに増えたという。
その分析リポート「MGMA DataDive Provider Compensation」2019年版は、医師や病院、大学病院など5500以上の組織に属する、14万7000人の医療提供者のデータをもとにしている。
プライマリ・ケア医の報酬中央値は、2014年には24万1273ドルだったが、2018年には26万6500ドルと、10.46%上昇した。これに対して専門医の報酬中央値は、同期間の5年間で7.78%増だった。
専門医の報酬の増加ペースは、プライマリ・ケア医の報酬増加のペースと同じくらい速くなり始めている。場合によっては、より速い場合もある。しかし一般的に言えば、報酬傾向は、プライマリ・ケア医のほうに有利に働いている。その要因は、医療保険会社が新たに「価値に基づいた」報酬体系を導入していることと、メディケアが、患者の健康を維持し、費用がかさむ医療を回避するべく努めるプライマリ・ケア医に金銭的に報いていることにある。
シグナ(Cigna)やユナイテッドヘルス・グループ(UnitedHealth Group)などの大手保険会社は、事実上全社が、自社ネットワークに所属する医師の少なくとも半数に対して、価値に基づいた報酬体系で支払っている。
こうした傾向は強まっており、今後の報酬に影響が及ぶだろう。
MGMAのフィッシャー=ライトCEOは、「医療的な実践が、より洗練されたかたちで価値に基づいた仕組みになっていけば、医療費削減において重要な役割を果たす医師の収入が緩やかに上昇することが見込まれる」と語る。「価値に基づいた報酬契約は、緊急入院を減らし、高額な検査をむやみに実施せず、再診の必要性を防ぐ医師に対して、金銭的に報いるものだ」