日本人観光客が急増、この夏のウラジオストクの楽しみ方

ウラジオストク駅から近郊電車で行く「サナトールナヤ」駅のすぐ前にビーチに面した海浜公園

7月に入り、今年も極東ロシアのウラジオストクでは海水浴シーズンが始まっている。町に近いビーチにはパラソルが立ち並び、水着姿の地元の人々が繰り出すという、北国ロシアのイメージとは異なる光景が見られる。

ビーチ沿いの通称「海辺通り」は、水辺の景色を眺めながら散歩する人たちであふれている。ローラースケートを履いた子供たちが次々と行き交う。人気のジョージア(旧グルジア)料理店「スプラ」やシーフードレストラン、カフェもあり、海鮮BBQの屋台も軒を並べる。ランドマークは遊園地の観覧車で、近くには絶叫マシンもあり、若者たちの叫び声が遠くまで聞こえている。

夜になると、中央アジア風串焼きのシャシリクを出す屋台のビアバーが、ビーチ沿いの小道にオープンする。広場にはドラムセットを持ち込んでジャズやロックを歌うストリートミュージシャンも現れる。今年は6月下旬に開催された国内外のミュージシャンを集めたミュージックフェス「V-ROX」のステージのひとつがこのビーチだった。


家族連れの多いビーチで、小さな子供たちが水辺で遊んでいる

マイリンスキー劇場のサマーフェス

ウラジオストクのこの夏のもうひとつの注目は、今月24日から8月7日まで開催されるマリインスキー劇場のサマーフェスティバルだ。会場は、現代屈指のヴァレリー・ゲルギエフ率いるサンクトペテルブルクのマリインスキー劇場の傘下にある沿海地方ステージである。

マリインスキー週間に入ると、サンクトペテルブルクから来たバレエ団や有名ダンサー、さらにはロシア国内で活躍する日本人音楽家などがウラジオストクに集結する。

ウラジオストクのマリインスキーバレエ団のソリストの西田早希さんによると、通常、5月中旬まで公演をこなしてきた彼女たちは、いっせいに休暇に入る。7月下旬からステージを再開するのだが、この時期のみ、サンクトペテルブルクとウラジオストクのバレエ団が、それぞれ交互に場所を変えて公演を行うのが恒例となっているという。

初日のオープニングバレエは、プーシキンの長編叙事詩を原作とした「青銅の騎士」。甘いルックスと優雅な身のこなしで「マリインスキーの王子」と称されるウラジーミル・シクリャローフも出演する。30日にはロシアを中心にグローバルな演奏活動を行うピアニストの松田華音の伴奏と、シズオ・Z・クワハラ指揮のウラジオストクのマリインスキー劇場交響楽団によるリムスキー=コルサコフとムソルグスキーの演奏という日本人の共演もある。


ウラジオストクのマリインスキー劇場で開催されるサマーフェスティバルの顔はヴァレリー・ゲルギエフ

同じ時期、サンクトペテルブルクにいる西田さんに聞くと「今回見逃せないのは、26日の著名な韓国人ダンサーのキミン・キム、27日のウラジーミル・シクリャローフによるガラコンサート(記念公演)です」という。サンクトペテルブルクの2枚看板であるふたりの公演は、確かに観るべき価値のあるものだろう。
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文=中村正人 写真=佐藤憲一

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