2拠点に居住を持つ「デュアルライフ」、ブームの背景

僕のキャンピングトレーラーはオフライン。夏は「避暑」の場所だが、非常時は「避難」という選択肢にもなりうる

最近あちこちで「デュアルライフ」という言葉を聞いたことはないだろうか?

大きなブームというほどではないが、静かに、でも確実に日本のライフスタイルに浸透しているのは事実。昨年末にリクルートホールディングスが発表した2019年のトレンド予測にもこの言葉は入っている。

デュアルライフとは、2拠点に居住を持つライフスタイルを言う。こう書くと、昔ながらの別荘を想像する人も多かと思うが、それほど予算もかけず、例えば普段は都心に暮らす人が地方のアパート1室を借りたり、一軒家シェアでかりるケースも多いという。そんな人はたちを呼ぶ「デュアラー」という言葉まで生まれているらしい。

自分ではそんな意識はなかったが、その意味では僕自身もデュアラーなのかもしれない。

デュアルライフの広がりの要因は一つではない。

政府の働き方改革もその理由の一つらしい。残業や休日など余暇時間が増え、ではその時間をどう利用するか、と考える人は確実に増えている。あるいは、本格的な移住の一歩手前のお試し段階の人もいる。また、スローライフという言葉に象徴される生き方に対する日本人の意識の変化も大きい。

キャンピグトレーラーはシェルターにも?

そして、地震をはじめ近年の異常気象などによる自然災害の多い日本列島。これから夏、秋にかけては局地的豪雨、台風なども多くなるシーズン。避難指示が出たら実際どこに避難すればいいのか。そして長期になった場合は……。そんな時、別の場所にもう一つの生活拠点があるというだけで心強い。

ブームの背景には、そんなセフティーシステムをどこか求めている部分も大きいかもしれない。少なくとも僕自身、東日本大震災時に、ライフラインを失った時の大都市の無力さを実感したし、怖さも感じた。都会生活は確かに快適だが、一度そのインフラを失ってしまうと、再起動には膨大な時間とエネルギーの注力が必要となる。

そんなこともあって八ヶ岳山麓にあるキャンピングトレーラーには、そもそもライフラインを一切引いてない。エネルギー源は基本、ボンベに入ったプロパンガスのみ。都市ガスと違ってオフライン。これだけで暖房、ガスレンジ、そして冷蔵庫まで稼働させることができる。夜の灯りは充電式のLEDランプ。充電が切れればキャンドルか石油ランプだ。

週末の1、2泊だから、オフラインの環境でもそれほど不便を感じずに過ごせることは分かっている。でも、災害時の避難先の選択肢が一つ増えることは確か。頑張ればここで1カ月ぐらいは行ける気がする。なにより、電気、上下水道のない生活を時々は体験し、知っていることは、知らないことよりずっといいと思っている。
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文・写真=小林キユウ

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