ビジネス

2019.07.19

人類の進化は加速していく。孫正義が語る人間とAIの未来

「SoftBank World 2019」に登壇した孫正義


手に負えない膨大なデータの到来

人間が全て推論するのは不可能に近いくらい、膨大なデータが必要になる時代がやってきます。「AIの力を使って一気に推論していく世界」になってくる、と思います。AIはまさに、人間が勘と経験と度胸に頼ってきた意思決定に代わって、もっと科学的でもっとデータに基づいた推論を形成する。それによって人類の進化はさらに加速するでしょう。

例えば天気予報。コンピューターを使った天気予報の方が、気象予報士の予報よりも当たる時代が来ましたね。10、20、30年後には、AIがデータを分析し、これから未来に起こることを予見する時代が来ます。つまりAIが、一番得意な「プレディクション」という役割を果たすようになります。そうです、AIはプレディクションにこそ使うべきだと思います。

例えば、AIの力でマーケティングをより効果的に宣伝できるようになります。女子高生に高級車の宣伝をしても売れません。こういう「対象の選定」も、AIだと人間の何倍もの速さでできます。また、ものを売っている会社では、在庫の回転率などをAIの力で60日から2日くらいに向上させることができれば、会社の利益は莫大に増えます。

気づいたら日本は後進国に

つい最近まで、日本は先進国でした。ところが、ほんの何年間で、「AI後進国」になってしまいましたね。クレジットカードを持っているから決済アプリを利用しない、というのは完全に「過去の人」です。AIを中途半端にかじった評論家が、「AIに何ができるんだ」と発言したりするのは、かなり懸念すべき状況です。日本の政府、学者、知識人、ビジネスマンはいち早く目を覚まして、キャッチアップしないといけません。



私は、決して日本が嫌いでこう言っているのではありません。愛しているからこそ言うんです。私は日本の会社にちっとも投資しない、と言われますが、悲しいかな、それは、日本にユニコーンがいないからです。投資したくてもなかなかできない、これが僕の言い分です。

僕はAIが欠かせないものだと思っています。AIは、人類を、癌という難病から救うかもしれません。人々をより幸せにするためにも、人間が中心になって、AI革命を迎え入れていかなければいけません。そのチャンスは目の前に来ているのです。

なんのためにAI革命をやるのか、それは人間が幸せになるためです。

構成・写真=裵麗善(ぺ・リョソン)

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